--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
2008/08/10

「お月さん」 桐江キミコ

お月さんお月さん
(2007/02/16)
桐江 キミコ

商品詳細を見る

★★★☆☆

「(前略)ミスター・ヒラは、これまで息をひそめて、MUSTとSHOULDの数珠つなぎの日々を、黙々と一日ずつこなしながら、堅実に人生を消耗してきた。味も素っ気もない平べったい毎日は、始まりと同じ終わりへと連なって消えていった。」
(「アメリカン・ダイナー」より抜粋)
デビュー作とのことですが、こんな美しい文がさらりと書かれているあたり、文章をとても書き慣れている印象を受けました。

周囲から疎んじられ、溶け込めず、社会とうまく折り合いをつけられない人たちが登場し、彼らとその周囲とが織り成す、12の短い物語です。
読後感は悪くないものが多いけれど、ちくりと刺さる痛み、ざらりと残る感触、ふわっとかすめるなつかしさ、そんなものがない交ぜになって、心がざわめきました。
この粟立つ思いはなんだろうと突き詰めて考えると、無意識に引いてしまう境界線の、どちら側に自分がいるのか、その立ち位置を意識していることに改めて気付かされる痛みが多くを占めています。
優越感や上から目線、もしくは劣等感や僻みを自分の心に抱えていることを、まざまざと思い知らされるのです。
このお話の中には、もう少し努力すればいいのにと思う人もいれば、出自や外見や所作という自分ではどうしようもないことによる周囲との隔たりで弾かれる人もいるから、身につまされます。

「お月さん」「金平糖のダンス」「キツネノカミソリ」「クリームソーダ」は何かの拍子にふっと思い出す記憶の断片。
何気なく通り過ぎてきたであろうその思い出を追体験して、後ろめたさと哀しみと愛おしさを感じます。
「薔薇の咲く家」「葬式まんじゅう」「寒天くらげ」は、生まれ育ちによる抗えない格差を意識してしまう話。
その環境の中で生きていくそれぞれの生き様に、心が揺さぶられます。
以下12編収録。
「お月さん」
「モーニングセット」
「クリームソーダ」
「金平糖のダンス」
「キツネノカミソリ」
「薔薇の咲く家」
「葬式まんじゅう」
「愛玉子ゼリー」
「デンデンムシと桜の日」
「寒天くらげ」
「アメリカン・ダイナー」
「三月うさぎ」

日常的な日々、二者択一的な人生、幻想的で現実離れしたもの、といろいろな作品が詰まった、それぞれに余韻が残る短編集です。
か行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
Comment

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。