--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
2008/05/21

「万寿子さんの庭」 黒野伸一

万寿子さんの庭万寿子さんの庭
(2007/03/30)
黒野 伸一

商品詳細を見る

★★★★☆

図書館で何気なく手に取ったこの本。
装丁の絵が鮮やかできれいだったのと、1ページ目を読んでみて読みやすそうだったので借りてきました。
当たりでした。

社会人になり一人暮らしを始めた二十歳の京子は、右目に斜視があることにコンプレックスを持っていた。
京子が引越したアパートの隣の一軒家に住んでいる、七十過ぎの万寿子(ますこ)さんは、近所付き合いをすることもなく一人で暮らしていた。
寡黙でひきこもりの老女と周囲に思われていた万寿子さんに、なぜかちょっかいをだされる京子。
はじめは、嫌がらせして喜ぶ老女とそれに困惑し怒る主人公の関係だったのが、徐々に打ち解けていき、二人の間には世代をこえた友情が生まれます。

以下ネタバレ箇所があります。
話の展開としては、めずらしいものではないんです。
高齢の登場人物が出てくれば、なんとなくその先にあるものを想像してしまう。
そして、年若い主人公は、彼女(もしくは彼)に感化されたり、触発されたりしながら、成長を遂げる。

今までにもそんなお話を読んだことはあるし、展開が想像できてはいても、とても感動しました。
そこに行き着くまでの過程がとても楽しい。
ユーモラスで、あたたかみがあって、ああ、こんな時間がいつまでも続いてほしい、という何気ないけどキラキラとした日々の積み重ね。
でも、ひとところに留まることはできないんですよね。

終盤は、少し無理があると思うし、都合がよい気もするけれど、ページをめくる手がとまらなくて、おもわず落涙していました。
こぼれ落ちていく時間と失われていくものを必死に拾い留めようとして、でもそれを止めることは出来なくて。
でも、時間は前に進んでいくからこそ、京子は成長できる。
哀しみのまま終わるわけではない、明るさがなんともさわやかでした。

また、京子はコンプレックスゆえに、人付き合いに消極的で、男性との接触にも奥手。
そういう経験の少なさから、意識しすぎて変な行動をとったり、自意識過剰気味になったり、極端に自分を卑下したりする心理もうまく描かれていました。
これを男性が書いたということに改めて驚きます。

一方の万寿子さんも、夫に先立たれて以来孤独に暮らしていたけれど、京子と仲良くなることで、まるでそれまでの時間を埋めるかのように、いきいきとアグレッシブに過ごす姿がまぶしいです。

文章もとても読みやすいし、ユーモアたっぷり。
ただ、ほとんどがおもしろいのだけど、たまにしっくりこない箇所もありました。
13P、20Pあたりの表現は、極端な気がして違和感がありました。
社会人としての自覚がなさ過ぎなのでは?と眉をひそめてしまう行動もちらほら(P94など)。
そういう、個人的にはちょっと度をこしてるなぁと思う表現がありながらも、ひきつけられてしまいます。
ぎゅっと濃縮された、力のあるお話だと思います。
ラストも、題名とのつながりがぐんと引き立って、いい読後感でした。
か行その他 | Comments(2) | Trackback(0)
Comment
黒野伸一さん、初めて聞きました。ついつい本を選ぶときに守りに入って、知っている人を選んでしまうので、こういう出会いの本は本当に素敵ですねー。

>ユーモラスで、あたたかみがあって、ああ、こんな時間がいつまでも続いてほしい、という何気ないけどキラキラとした日々の積み重ね。
でも、ひとところに留まることはできないんですよね。

留まれないのはせつないですね。でも過ぎてしまうからこそその時間はキラキラ輝けるのかもしれませんね。

また読みたい本ができましたー。また男性が書いたのにすごいっていうのも興味をそそりますねー。
男性が書いた女性像って、違和感を感じることがよくあるんですが(逆もきっとそうなんでしょうけど)、この本は女性の心理描写がよかったです。

最近は、なるべくいろんな人の本を読むように心がけています。
でも、まだ読んだことのない人の本を手に取るときは、期待と不安がいつも半々ですね(笑)

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。