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2008/05/19

「雲を斬る」 池永陽

雲を斬る雲を斬る
(2006/04/04)
池永 陽

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「雲を斬る」 池永陽
★★★☆☆

池永陽さんの本は初めて読みます。
五月のこの清々しい時期に読めたことが、なんとも嬉しいお話でした。

主人公は江戸の貧乏長屋に住まう浪人、由比三四郎。
寺子屋で子供たちに読み書きと読本を教えながらも、その生活は苦しく、副業として、多少腕に覚えのある剣で道場破りをし、なんとか生計をたてています。
越前丸岡生まれの三四郎が江戸で暮らす目的は、父親を殺した仇・滝沢伝十郎を探し出し、敵討ちをすることにあります。
たった一人の人間を探し出すのは途方もないことで、故郷を離れ、滝沢を探しながら四年間うろつきまわり、滝沢の生国・江戸に入ったのが三年前。
すでに七年の月日が流れていました。

三四郎は、貧乏浪人に身をやつしながらも、心根はすさむことなく、武士としての矜持を持ち続けている。
そして、人に対してはとにかく優しく、情に厚い。苦しんでいる人たちを放っておけない。ときにはそれが甘さという弱点にもなる。
三四郎の生真面目で不器用な生き方は、ときに厄介事を背負うけれど、周囲の人からは頼られ、好かれるのです。

ある日、寺子屋の教え子の姉・おさとが、恋人の博打の借財を肩代わりして女郎に売られることになります。
それを知った三四郎が、道場破りによって得た金を渡すことで売られるのを食い止めたが、女衒に恨まれ、彼の首には五十両もの賞金がかけられることに。
敵討ちを本懐とする三四郎が、自ら賞金首になる、という皮肉な事態におちいるのです。

三四郎は、次々とあらわれる刺客たちとの勝負をどう切り抜けるのか。
そして、敵討ちを果たし、故郷に帰参することは叶うのか。
命を懸けた立ち合いのなか、三四郎の秘剣が冴え渡ります。
三四郎は強いけれど、超人的な強さを持っているわけではなく、ハラハラしながらも惹きつけられます。

また、三四郎の周囲には、女郎に売られかけたおさと、長屋の隣人・巳之吉、寺の住職・快延らが主だった人物として登場しています。
三四郎に好意を寄せるも恋人への思いも断ち切れない、おさとの複雑な女心。
空を飛ぶことを夢見て「鳥舟」を作り続ける巳之吉の、胸に秘めた思い。
三四郎の恩人にして、よき話相手の快延の、含蓄ある言葉。
それぞれが心憎いほどにいい味を出しています。

人々と関わり合い、刺客と立ち向かうなかで、三四郎自身の心にも小さな変化が生じていきます。
武士の矜持と義理人情の葛藤のすえ、最後に三四郎が出した答えとは。
ラストはその先を知りたいような気もしましたが、とても美しく清々しい終わり方でした。
とても好きな場面で、印象に残るフレーズがあるのですが、ここに書くとネタバレになるので控えます。


蛇足:
三四郎とおさとは年が離れ過ぎている、との記述が何度か見られます。
おさとは、十六~十七。
三四郎は明記されていない(と思う)ので、気になってあとで計算してみました。
三四郎の父が、嫁をもらったのが三十歳前。
父は四十九のときに三四郎に家督を譲り、滝沢の剣に打たれ死んでいます。
ということは、敵討ちのために故郷を出たのは十八か十九歳といったところでしょうか。
故郷を出て七年経っているので、物語の中では二十五、六歳くらい?
もっと若い可能性もありますね。
イメージとしては三十代前半を想像していたんですが、思ったより若かったです(笑)
あ行その他 | Comments(2) | Trackback(0)
Comment
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お返事が遅くなってしまいました。
コメントを下さった方、ありがとうございます。

コメント欄にて失礼します。
私は図書館利用なので、現在手元にこの本がなく、書き抜くことができなくてすみません。
とてもいい本でしたね。

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