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2008/05/12

「とりつくしま」 東直子

とりつくしまとりつくしま
(2007/05/07)
東 直子

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★★★☆☆

本の説明文を読んで私が想像していたものとは、趣のちょっと違うお話でした。

死後、現世に心残りのある人は、何かにとりついてこの世に戻ることができる。
ただし、生きているものは既に魂が先住しているので、生命を持たない「もの」のみ。
「もの」が形を失うと、それにとりついた魂も消え、二度とこの世に戻ることはできない。
死んだ人がそれぞれ選んだ「とりつくしま」の10の物語と1つの番外篇のお話です。

「とりつく」という言葉の印象から、とりついたら、その魂の意志が働くものだと勝手に想像していたのですが、そういった能動的な働きかけは一切出来ません。
ただただ、その「もの」として、そこに存在し、静かに見守るというだけ。
また、生きている人間は、当然「もの」の思いを感じとることはない。
そこに、どうしようもなく虚無感を感じました。

多くの魂が、現世の大切な人、気にかかる人の近くにいようと、とりつくしまを選びます。
けれど、その「もの」を現世の人が大切にしてくれるとは限りません。
とりついたものが処分されれば一緒に消えてしまうし、誰かに渡されれば別の人のものになってしまう。
自分の死後に、残された人達の生活を見ることになって、見たくないものや知りたくないことをつきつけられてしまうこともある。
10話のなかで、幸せなことに喜びや温かさを感じることの出来た「もの」もあれば、そうでない「もの」もあります。
一話目の「ロージン」は、死んだ母親の思いと現実とがうまく噛み合った、後味のよい終わり方でした。
そこでとりつくしまの意味を一度は納得できたような気がしたのに、次の話からまたその意味がよく分からなくなってしまったのです。

語り口は淡々としていて、ときにユーモラスに、ときに朗らかに描かれているものもあります。
なかでも、「白檀」の静かな美しさには陶然とし、「名前」の淡い思慕がユーモラスに描かれている様に温かさを感じました。
けれど、やはり物語の底には、たえず疎外感と諦念のようなものがただよっていて、その余韻がずっと残るのです。

死して後も、自分のいない世界を見続けることができるというのは、ある意味とても残酷な気がします。
大切な人との死別の後に、どんな状況にせよ受け身でしかいられないことのもどかしさと欠落感で苦しむ必要がどこにあるのかと、読みながら心がずっとざわざわしていました。



とりつくしまを選ばないという選択肢もあります。
もしも、私にとりつくしまを選ぶ機会が与えられたなら。
それでも、死後の世界にどんな現実が待ちうけようと、思いが報われなかろうと、大切な人のそばにいたい、見守っていたいと思えるのか。
その人のいる世界に、自分はいないのだということをまざまざと思い知ることに耐えられるのだろうか。
しばらく考えたけれど、答えは出せませんでした。
だからこそ、私が今生きて、相手に何かを伝え、自分の意思で動けることの尊さを感じずにはいられません。
そして、私の大切な人たちにも、どうかとりつくしまを選ばず、何にも惑わされることなく安らかであってほしいと願ってしまいました。

うーん。
このようなテーマを、お話の世界観を逸脱して我が身に置き換えて考えたり、周囲に照らし合わせたりしてしまう破目に陥る話は、今は地雷なのかも。
冷静さを失います。

収録作品
「ロージン」
「トリケラトプス」
「青いの」
「白檀」
「名前」
「ささやき」
「日記」
「マッサージ」
「くちびる」
「レンズ」
番外篇「びわの樹の下の娘」


番外篇は番外篇でこわかったです。
は行その他 | Comments(6) | Trackback(1)
Comment
こんにちは
ひさびさこちらにコメントしてます。
まりもさんの感想読んで、この本にとても興味を持ちました。
でもとても重い題材ですね。
読むときは勇気を持って読まないといけないかな・・・

いつか読んでみたいと思います。
コメントありがとうございます♪
>dualさん♪
さらっと読めるので油断してたんですが、私にはアイタタタって感じでした(苦笑)
いろんな結末が待ち受けてるのは、ある意味公平なんだろうなと思えます。

そのときの心境によっても本の印象ってかわりますよね。
私も、ずっと先に読み直したら、かわるかもしれないです。
他のレビューを見ていると好評のようですよ♪
心があたたかくなったと書かれてる方も多くて、捉え方って人様々なんだなぁと思ったりしてます。
dualさんがもし読まれたら、感想をお聞きしたいです☆
初めまして
初めまして。
1ヶ月ほど前くらいから、まりもさんのブログを毎日みるのが日課になってました。
ずっとコメントしなくてすみません。
最初は料理ブログの方からやってきました。
私も料理が大好きで、本も好きなんですけど、ただ漠然と本屋さんにいっても、何を読んでいいのか分からずに困ってました。
そしてこちらにたどり着いて、「オオー!」まりもさんのレビューを読んで、読みたい本がたくさん出てきて、たくさん注文しました。

昨日「とりつくしま」を読みました。
雰囲気的にはほんわかしてるんだけど、切ない物語でしたね・・・

また遊びにきます。
>ayacchiさん♪
コメントありがとうございます!
つたない感想ばかりで恥ずかしいですが、読んでいただいてとっても嬉しいです!
こちらのブログはかなりのマイペース更新ですが、よかったらまた遊びに来てくださいね☆

「とりつくしま」切なかったですね…

No title
ほんとうにこんな事があるのならば…少し怖い気もしたり…。
でもほんわかと温かい気持ちになれるお話しでした。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
No title
>藍色さん
コメント、トラバありがとうございます。
個人的に内容がつらい時期に読んだので、正直しんどかったのですが、とても印象深い本です。
落ち着いた今、また読み返してみたいです。

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