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2007/12/26

「吉原手引草」 松井今朝子

吉原手引草吉原手引草
(2007/03)
松井 今朝子

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★★★☆☆

直木賞をとった作品で、やっと図書館の予約が回ってきました。
語り手の独特の話し言葉で成り、はじめは物語の輪郭が掴みにくいので、入り口が若干読みづらいのですが、時代小説としてはあまり読んだことのない構成で、おもしろかったです。

吉原一と呼び声の高い花魁・葛城が、謎の失踪を遂げて数ヶ月。
葛城に関わりのある人たちが、聞き手の男に対して、当時のことを語るという構成です。
語り手は、引手茶屋の内儀にはじまり、見世番や番頭、遣手、床廻し、妓楼の主人に幇間といった妓楼で働く人々や、吉原にやってくる客など。
聞き手の男は、若旦那風のなかなかの美男で吉原には不慣れ、ということが語り手側から伝わってくるものの、正体については最後のほうまで分かりません。
不慣れな聞き手に対して、彼らはそれぞれの立場で事細かに吉原の仕組みや作法などを語ってくれるので、読者の私にも吉原の文化や構造がよく分かるようになります。

花魁のでてくる話は他でも読んだことがありますが、それを支える裏方の職業がどんなであったかや、金銭事情、店の格差、何が粋で何が野暮かなどは知らないことだらけで興味深かったです。
吉原という苦界に身を落とし、身体を張って生きる女たちの苦しみや悲しみの生々しさはあまりなく、存外さらりと描かれていました。

そのうち、人々の語り口から葛城の像が浮かび上がってきて、失踪についての興味もわくようになり、真相について知りたいと思うようになってからはどんどん読み進みました。
葛城像や失踪に関して、周囲の人たちが語り明かすことは一貫しているわけではありません。
捉え方や感じ方は人それぞれだし立場によっても違うし、聞き手に対して全てを正直に話してるわけでもないだろうから複雑で、謎は深まります。
共通している評価として、葛城の美しさや聡明さ、度胸のよさ、強さなどは伝わってくるものの、本人の弁はないので、もっと葛城の人となりがわかるような、あるいは息遣いが聞こえてきそうな身近さがあればなぁという気もしないではありませんでしたが、その煙に巻かれたもどかしさもまた一興です。

真相は、前半を随分引っ張ったわりには、そこまでの驚きもなかったし、遠回りな本懐に唖然としたのですが、それぞれの語り手の話が折り重なって、終盤に収束していくところはお見事。
「卵の四角と女郎の誠は無いもの」と言われるような、嘘と虚飾で固められた廓でも、嘘の中の誠を垣間見ることができました。
読み終えた後は、涼しい風が吹き抜けたような気分になりました。
ま行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
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