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2007/12/23

「チェリー」 野中ともそ

チェリーチェリー
(2007/09)
野中 ともそ

商品詳細を見る

★★☆☆☆

13歳のショウタは、伯父から夏休みにアメリカ行きを誘われます。
伯父所有のアメリカの家に、元妻ベレニスの母親モリーが一人で住み続けており、家を売却するためにモリーに出て行ってもらうのを説得するためです。
ショウタは頼りない伯父に付き添って、アメリカ北西部の「さくらんぼの州」にある伯父の家へ向かいます。

その家は、蛍光がかったミドリ色に塗られ、敷地には瓦礫や異臭を放つがらくたの丘があり、毒のある蔓草がはびこり、家の中も水たまりのできた台所や穴を開けた窓としっちゃかめっちゃかに改造されていました。
モリー自身も黄と黒のミツバチ柄のばかでかいシャツに、不可解な色合いに染まったロングスカートをはき、アヒルのくちばしのようなゴム靴といういでたち。
「魔女たいじ」と勇んでやってきたショウタは、気勢をそがれるとともに、モリーが極度の人見知りで、少女のような心で、自分の世界を崩さずに不器用に生きていることを知り、次第に心を惹かれていくのです。

ショウタ自身は、両親の離婚により住み慣れたアメリカから母とともに日本へ帰国し、鬱屈とした気持ちを抱えて日々を過ごしていたところでした。
日本語よりも英語が得意なことを学校でからかわれ、次第に誰とも口を聞かなくなり、いつもヘッドホンで外界を遮断するようにギャングスタ・ラップを聴きいて音楽で武装する毎日を送っていました。
伯父からアメリカ行きを持ちかけられたのに飛びついたのも、日本での日々から逃れたい気持ち、母にも一人の時間を上げたい気持ちなどがあったのです。

じょうずに居場所を見つけられない人間をいつの間にか引き寄せてしまう、モリー。
ショウタもそんな引き寄せられた人間の一人でした。
このような、現状に不満を持つ少年少女が、少し世間ずれした老女(だいたい料理がうまい 笑)と交流を持つ話、というのはわりとあるパターンではあると思うのですが、ここでかなり驚いたのはそれが「恋」という感情に発展する、ということ。
13歳のショウタと、70過ぎのモリーの恋。
きっと、愛する人のことを思い、守りたい、大切にしたいと心から願うショウタの気持ちは、年齢や場所を越えて、誰にも理解されなくても貫かれるほど強いものだったのでしょう。
でも、私の心が狭量で純粋でないからか、その感覚がすっと心に入ってこず、一歩ひいた目で読んでしまいました。
どうしても想像がおよばなくて。

けれど、モリーの無垢で純真な心や、自分に正直で人にやさしい行動はとても素敵だし、描かれるキラキラと輝く日々や、モリーの周りに集まる人たちの温かさは、読んでいて心地よかったです。
たとえば、遊園地の海賊船の上からヨーグルト・チェリーをばらまくモリー。
モリーの作るチェリーパイをはじめとした、数々のおいしそうな料理。
モリーのそばにいる(らしい)、目に見えないハーヴェイ・ジュニアという友達。
モリーに鳥のエサをもらって鳥を集める鳥男。
その世界観はちょっと不思議で、まぶしく、優しい気持ちになれます。

「みんなを喜ばせたいとか、いつだって考えてないよ。ええとね、そういうのは考えちゃいけないんだと思う。あたしはってことだけど。だって欲張ったら、いちばん喜ばせたい誰かを、ここぞってときに喜ばせられないかもしんないでしょ」
見返りも利益も求めず、その人のためだけを思っておいしいものを作る、モリーの生き方が印象的でした。
な行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
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