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2007/12/09

「包帯クラブ」 天童荒太

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)
(2006/02/07)
天童 荒太

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★★★☆☆

「外の景色と、心のなかの風景は、つながっている」
傷ついた心からは見えない血が流れていても、直接手当てはできないけれど、その傷を受けた場所に包帯を巻くことで心が軽くなり、癒される。
病院の屋上で出会ったディノと名乗る少年とのやりとりのなかで、ワラはそのことを実体験として感じます。

このお話は、大人になったワラが、高校時代にメンバーとはじめた「包帯クラブ」の活動記録を、クラブのウェブサイトに報告書として掲載する、という形で書かれています。

包帯を巻くという行為の輪は、ワラの親友シオ、シオの幼馴染のギモ、その知人達と広がっていき、いっそのことクラブにしようと「包帯クラブ」を立ち上げるのです。
クラブのメンバーの心の傷はもちろんのこと、サイトを作り、包帯を巻いてほしいと依頼があればその場所に包帯を巻きに行き、その写真を送ります。
公園のブランコ、サッカーゴール、ガードレール、倉庫の鍵・・・街のいたるところに。

気付かないふりをしていた傷、言えないでいた心の傷を、包帯を巻くことによって、これは傷なんだよと自分で認め、人にも認めてもらうこと。
手当てをすることで、傷はすぐに癒えなくても、傷口の血を止めてあげること。
もちろん、まだ包帯を当てることもできないような深い深い傷には、時間や心の折り合いなどが必要で、すべての傷に適用できるわけではないけれど、彼らの行為に救われる人だっています。
その行為は、受けた傷だけでなく、他人に負わせてしまったかもしれない傷にも気付き、傷ついた相手の心にも思いをめぐらせることにも波及します。
些細なことだけれど、自分たちにできることをしようと実践する姿に、なんだかやさしさをもらえた気がしました。
すんなりと活動が進むわけではなく、メンバーに誘った中学時代の同級生とのわだかまりや、話題になる一方で、巻かれた後の包帯に苦情がでるなど、問題が相次ぎます。
中学時代に仲がよくても、進路の違いや、あらわになる家庭環境や社会階層の差などから溝ができたテンポとリスキ。
疎遠になっている四人の様子が、とてもリアルに描かれていました。
それは現実にもよくあることで、その距離を埋めないまま離れていくことが多いと思うのですが、ワラとシオは、テンポとリスキもクラブに誘おうと努力します。
苦情のほうは、ちょっと想像すれば容易に気付けると思うのですが、それも若さかなぁ。

また、経験が似ていても、人によって受ける傷の度合いは違うのだから、「そんなの誰にでもあることだ」なんてひとくくりにしてはいけないだとか、どうせ何もできないからといって、人のつらさや痛みを見ないようにしても、なかったことにはならないし、知らないでいいわけではない、など繊細で傷つきやすい年頃の心の内側をきちんと捉えて書かれてありました。
ディノの生き方や行動には賛成できなかったけれど、彼の傷の深さには心が痛みました。

ワラの記述の途中で、他のメンバーの近況報告が織り込まれていて、大人になった登場人物達がどのように現在を過ごしているかが分かるようになっています。
高校時代の思いや行動が、現在に生かされているさまが分かって、構成としてはおもしろいけれど、たとえ紆余曲折があったにせよ、全員がうまく行き過ぎているような気もしてしまいました。
人はそんなに真っ直ぐに成長でき、夢や志しを追えるものだろうかと。

もっと若いときに読めば、彼らが彼らのまま成長したことを素直に嬉しく思えたのでしょうか。
高校生の彼らにも、感情移入の前に、大人の目線で行動を心配したり、微笑ましく思っていたりして、私は大人になってしまったんだなぁとつくづく気付かされました。
爽やかで心温まるお話には違いないのだけれど、距離感がうまくつかめなくて。
彼らと同年代のときに読めたらよかったです。

でもラストの私信のやりとりは、かなりツボでした(笑)

ちなみに、図書館で借りたのは表紙が緑色でしたが、画像が映画出演者の表紙のものしかなかったので、そちらを載せています。
た行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
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