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2007/12/05

「東京・地震・たんぽぽ」 豊島ミホ

東京・地震・たんぽぽ東京・地震・たんぽぽ
(2007/08)
豊島 ミホ

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★★★★☆

震度5以上の地震を、過去に三度経験しましたが、いずれも食器が割れる程度で、家族や知人にも怪我はありませんでした。
この話のなかで起こる震度6強、火災や倒壊が相次ぎ死者九千人超という大震災とは比べものになりませんが、それでも、揺れる直前に聞いた地響き、電車が近くで通っているかのような振動や、ミシミシと建物の軋む音は、今でも鮮明に覚えています。
あのせり上がってくる恐怖、強さと長さの予測がつかない焦燥、なす術もなくやり過ごすだけの所在無さはトラウマになっています。

だから、そういう切羽詰った臨場感が、ありありとしたお話になるのかなと思いきや、意外と淡々とした語り口で、緊迫感はあまり感じません。
地震そのものよりも、地震という事態に対しての、人の心の動きや行動が中心のお話です。

性別も年齢も関係なく、状況や立場や境遇の違う人たちに、わけ隔てなくふりかかる天災。
ただただ、その瞬間の行動や場所によって運命が大きく変わってしまう。
人と、人の作り上げたものは弱くて脆いのに、空はいつものように青く澄んでいて、クローバーは茂り、たんぽぽは綿毛を飛ばしているのが印象的です。

壊れた日常のなかで、大切な誰かを思う人、痛みに苦しむ人、現実から目をそらす人、諦める人、非常事態に乗じて私欲に走る人、希望を捨てない人、さまざまです。
それこそいろんな人がいて、いろんな思いや考えがあるんだなと、ときには薄ら寒く、殺伐とした気分にもなりましたが、そういう側面も当然存在するんですよね。
14の極めて短いストーリーから成り、ところどころでリンクしているものの、切り取られた断片の続きが気になって仕方がありませんでした。

さくさくと読めるので油断していましたが、最終2話の「パーティにしようぜ」と「いのりのはじまり」で泣けました。
「パーティにしようぜ」ではお母さんと夕焼けの空を思い浮かべて、「いのりのはじまり」は最初の話とつながりに、とてもせつなくなりました。
残った人の思いと、涙の意味が胸に迫ります。
感想を書くまでに少し時間が空いたのですが、そこだけ読み直して涙が止まらなくなってしまいました。

地震の直後は混乱があり、興奮や放心状態でうまく心が働かなくても、少し時間がたったときに、やっと実感となって押し寄せる感情が苦しいと思うんです。
この2編は、震災6日目、三ヵ月後、と少し時間が経っていることから、感じる部分が多かったです。
「それでも元気になるって素晴らしいことだなと思って」
立ち直ろうとする希望が少しでも見えて、ほんの少し光が差したように思えました。
「僕が選ばなかった心中、の話」地学科の友人から地震の予想日を教えられ、東京を離れた大学生の僕。
「空と地面のサンドイッチ」打ち明け話をしようと、恋人の靖之を近所の公園へ連れてきた私。

「ぼくのすきなもの」蝶の標本をコレクションしている小学生の僕。学校で地震が起きて・・・。

「くらやみ」娘といた公園の東屋の屋根に閉じ込められた女性が、携帯を取り出す。

「ぼくらの遊び場」避難所の体育館で過ごす非日常にはしゃぎ、友達とあそぶ小学生の女の子。

「ついのすみか」小さな施設で、たった一人迎えが来ないマツさんと、施設の所長を勤める女性。

「宙に逃げる」高層マンションに住む芸能人が見下ろした外の世界。

「だっこ」病院のベッドの上にいる高校生の私。我が身に降りかかったこと、弟のことを思い返す。

「どうでもいい子」避難所で顔を合わせたかつての同級生に、頼まれごとをされる中学生の少女。

「夢を見ていた」地震発生後、妻子と連絡がとれないのに、志願して会社に残るといった男性。

「出口なし」ビルに火をつけるよう上から命令された、二人の男。

「復讐の時間」いじめを受けて東京を離れていた少女が、震災後にとった行動。

「パーティにしようぜ」子供の頃にも大震災を経験していたフリーターが、自分にできることを考えた。

「いのりのはじまり」震災で亡くなった恋人を思う女性。二度と行くまいと決めた東京に出張が決まる。


最後の2編以外にも「くらやみ」「ついのすみか」「だっこ」が特に心に残っています。
豊島ミホ | Comments(0) | Trackback(1)
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東京・地震・たんぽぽ # 出版社: 集英社 (2007/08) # ISBN-10: 4087753832 評価:83点 東京で大地震が発生した。そのとき人々はどう感じ、どんな行動をしたのか。14編の短編が様々な人たちが露にした心のなかを描いていく。 まずは設定がうまい。東京直下型

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