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2007/11/19

「長崎くんの指」 東直子

長崎くんの指長崎くんの指
(2006/07/20)
東 直子

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★★★★☆

人寂しい山中にある、遊園地「コキリコ・ピクニックランド」。
さびれて閑散とした遊園地というのは、寂しく、どこかノスタルジックな感じがします。
人生に疲れたり、行き場を失ったりした人たちが、その場所に導かれ、吸い寄せられるようにやってくるお話です。
ふわふわと不思議で淡い世界に、一緒に迷い込んだような気分になります。

東さんは歌人だそうです。
だからでしょうか、穏やかでさりげなく、あっさりしているけれどやさしさの感じられる言葉選びに、魅力を感じました。
ごく限られた文字数で世界観を表現し、繰り広げるために、一語一語の言葉をとても大切にされているからなんだろうなぁと思いました(短歌は未読ですが)。

「今、まさに、この時、つまり、青春、なんだな、と思った。」
というような読点の打ち方や、園長の訥々としたしゃべり方も独特で、リズムの感じられる文もおもしろいです。

以下、主人公がそれぞれかわる6つの本編と、「夕暮れのひなたの国」を収録。
「長崎くんの指」
職場から逃げ出し、家出した「わたし」が、さまよううちに辿り着いたコキリコ・ピクニックランド。
求人募集に名乗り出ると、採用されることになり、仮眠小屋に住むことに。
そこで働く長崎くんの「完璧」な指に惹かれるというお話。
不思議な余韻を感じるとともに、「わたし」にとっての楽園である、この施設の行く末を知ることになる一編です。

「バタフライガーデン」
妹のもとで甥の世話をしながら暮らす「四十過ぎの無職、貯金ナシ」の女性。
妹に言われ、甥をコキリコ・ピクニックランドの「バタフライガーデン」という蝶の温室へ連れて行くことになり、係の岩山と知り合います。
何度か通ううちに、夜の温室を訪れることになり、そこで目にした蝶のせわしない動き、命のはかなさについて語るシーンが妖しくきらめくようで、心に残ります。

「アマレット」
美人だけど、それゆえに周りと距離ができるマリアさんが、紆余曲折を経て、観覧車の光に吸い寄せられるようにコキリコ・ピクニックランドへやって来ます。
おだやかで物悲しく、美しい情景が印象的です。
森田さんのハーモニカが聴こえ、観覧車の光が目に浮かぶようです。

「道ばたさん」
家の前で倒れ、記憶喪失だという女性を成り行きで預かることになった、中学生の麻美と母。
彼女のことを「道ばたさん」と呼ぶことに。
たまたまもらった遊園地のチケットの話をすると、道ばたさんは、その名前に憶えがあると言い出し、記憶の手がかりにと、三人でコキリコ・ピクニックランドを訪れる様が、ユーモラスに描かれています。
「うかうか」という言葉が何箇所か出てくるのですが、その使われ方がとても好きです。
「うかうかしてるくらいで、ちょうどいいのよ。いつもきりきりしてたら、幸せには、なれないでしょ。」

「横穴式」
心霊スポットの洞窟アトラクションを取材するため、コキリコ・ピクニックランドを訪れた女性。
得体の知れない何かにつかまり、夢か現かの世界に取り込まれるようで、背筋が寒くなりました。
それもある意味、その世界の持つ側面なのでしょうが、これまでのお話の穏やかさとは異質で、怖さを感じました。

「長崎くんの今」
夢の終わりの姿を見たようで、うら寂しい感じがしました。
とくにバタフライガーデンの有り様に少なからずショックを受けました。
「そこには、迎える人と待つ人がいて、金銭の授受が行われ、機械が動き、食べ物が焼かれ、匂いが放出し、音が生まれ、光が反射した。そこには「時間」が流れていた。同じ時間の枠の中にとけこんでいるものがあったのだ。」
夢の終わりであるはずのこの話が一番とりとめがなくて、とらえどころのなさすぎる長崎くんに、少し戸惑いを感じました。

「夕暮れのひなたの国――あとがきにかえて」
生あたたかく、甘い匂いのする、夕暮れのひなた。
その国に連れて行かれないように「おねいさん」にかけられた魔法のエピソード。
とても幻想的です。
は行その他 | Comments(2) | Trackback(1)
Comment
No title
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしています。
No title
>藍色さん
トラックバックありがとうございました☆

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