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2007/11/09

「失われた町」 三崎亜記

失われた町失われた町
(2006/11)
三崎 亜記

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★★★☆☆

30年に一度起こる町の「消滅」。忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残された人々の悲しみ、そして願いとは。大切な誰かを失った者。帰るべき場所を失った者。「消滅」によって人生を狂わされた人々が、運命に導かれるように「失われた町」月ケ瀬に集う。消滅を食い止めることはできるのか?悲しみを乗り越えることはできるのか?時を超えた人と人のつながりを描く、最新長編900枚。
「BOOK」データベースより


プロローグとエピローグに折り挟まれて、7つのエピソードから成る長編。

冒頭8ページのプロローグを読んだ段階で、長丁場が予想されました(笑)
特に説明のないままに独特の設定ありきで話が始まるので、特殊な言葉が意味不明のままで読み進めていくことに耐えなければいけません。

読むうちに、近未来日本が舞台かと思っていたのを、現代日本によく似ている別世界が舞台だと頭の中を修正。
本編に入ってからも「汚染」「抑制」「居留地」「ゾーン」「本体と別体」などの独特の言葉が出てくるたびに浮かぶ頭の中のクエスチョンマークに、適度に折り合いをつけて読む必要があります。
のちに説明されるごとに、頭の中を整理し想像力を働かせて、自分なりに世界観を再構築し、あれはこういう意味だったのかと確認する作業でしばしば中断されます。

世界観の大半が掴めてきて、ようやく感情移入できるようになりました。
登場人物それぞれの立場でエピソードが書かれ、それが折り重なっていくので、一定の側面に対する多方向からのアプローチには厚みがあり、読み応えがあります。
ただ、うまくいきすぎなところもあり、登場人物どうしの関係がつながりすぎている気もします。
また、向いている方向がみな同じ(途中で挫折したり、利己的だったり悪意があったりする人物があまりに少ない)なので、偏りがあるかなとは思いましたが、この話に他の側面からのエピソードが入ると異質な感じがしてしまうかもしれないし、これでよかったのかもしれません。

エピローグまで読み終えて、時の流れを感じ、伝わる思い、受け継がれる願いに心を打たれました。
思わず冒頭の「プロローグ、そしてエピローグ」を読み返しました。
今度は不完全な余韻にも気持ちよく浸れました。
再読すれば、前半のエピソードももっと違った感慨を持って読めるような気がする作品です。
蛇足ですが、この作中に何度か「いや増す」という言葉がでてきます。
文脈から意味は想像できるものの、聞きなれないので辞書で調べてみましたが、常用語ではないのか該当がありませんでした。
「いや」(弥)で調べると、「ますます、あとからあとから次に」という意味でした。
三崎亜紀 | Comments(0) | Trackback(0)
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