--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
2007/10/19

「しずく」 西加奈子

しずくしずく
(2007/04/20)
西 加奈子

商品詳細を見る

★★★★☆

いい本を読めました。
6つの短編から成り、どの話もよかったです。
とくに「影」でドキリとし、「シャワーキャップ」で涙が出ました。
シンプルで飾らない文とまっすぐな言葉は、西さんの人柄があらわれているのでしょうか。

以下、少しネタバレありです。
「ランドセル」
大人になって偶然に再会した幼馴染二人の女性が、ロスへ旅行する話。
私にもこういう幼馴染が遠く離れた場所にいて、彼女のことを思い出しながら読みました。
当然ながら、小学生のときには考えもつかない大人の事情を抱えている二人。
再会してすぐの二人の間に流れる微妙な空気や、その後の距離の縮まり方はとてもリアルです。
そして、読み終えたときには爽快な気分になりました。

「灰皿」
夫の死をきっかけに、かつて住んでいた家を貸しに出す老女と、その家を借りたちょっと変わった女性との交流。
入居者の女性については、え~!?という部分がありましたが、老女の語り口がゆったりとおだやかで、そのギャップがおかしくもあります。
そしてその女性のまっすぐな真剣さに触れて、老女が心の奥深くにしまっていたものを出していこうとするところがよかったです。

「木蓮」
彼と元妻との間にできた7歳の子供を1日預かることになってしまった、34歳の女性の話。
子供のマリが可愛げがなく、返答に困る質問ばかりしてきて、とても憎たらしく描かれています(笑)
主人公はそれにムカつきながらも、彼を失いたくない一心でなんとか取り繕い、機嫌をとろうとします。
その悪戦苦闘がコミカルに書かれていて、笑えるやら一緒にイライラするやら。
でも、とうとう我慢しきれなくなるとともに、ある自分の気持ちに気付く主人公。
結末は結果オーライですが、読後感は爽やかでした。

「影」
ある事情から会社を辞めて小さな島に一人旅にきた女性と、島の人たちの接触。
嘘つきで有名な少女みさきに、嫌悪感を抱きながらも何故か自分を重ねてしまう主人公。
この話は心にずしっときました。
嘘をつくことで自分を保っているみさきが痛々しいです。
康子さんの言葉に涙が出そうになりました。
そして、主人公の、周りからこういう人だと思われているような自分を演じてしまう、というのが耳に痛いです。
でもそんな自分も紛れもなく「私」なんだと思い至るところで、私自身はっとさせられました。

「しずく」
雌猫2匹の視点で描かれた、それぞれの飼い主の出会いから結末まで。
猫を飼ったことはありませんが、猫ってあんなにすぐに物事を忘れてしまうのでしょうかね(笑)
2匹の応酬はユーモラスで、ほのぼのとしているのだけど、ラストはせつないです。
しずくって蛇口だけではなかったんですね。

「シャワーキャップ」
付き合って7ヶ月の彼との同棲が決まり、引越し準備をする娘と、それを手伝いに来ている母とのやりとり。
このお母さんが無邪気で天真爛漫でかわいらしく、実に頼りないのです。
小さい頃いじめられた自分より先に泣く母、センサー式のトイレの流し方がわからず助けを求める母は、まるで親子が逆転しているよう。
そんな母をどこか羨みながらも苛立つ娘の心境がよく分かって、ドキドキしました。
だからこそ、彼女が母の思いと愛情を知ったとき、涙が溢れて止まりませんでした。
このお話を読めてよかったです。
西加奈子 | Comments(0) | Trackback(0)
Comment

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。