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2011/10/25

「小さいおうち」 中島京子

小さいおうち小さいおうち
(2010/05)
中島 京子

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★★★★

赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々を振り返るタキ。そして60年以上の時を超えて、語られなかった想いは現代によみがえる。
「BOOK」データベースより



少し前に「エルニーニョ」を読んでから、気になり始めた中島京子さん。
本作は直木賞受賞作ということで、なかなか予約がまわってこなかったけれど、待った甲斐がありました。

タキの手記を読む形で進んでいく物語は、昭和の初めから始まります。
東北から、女中として働くために上京してきたタキは、美しく年若い時子奥様に仕えることに。
時子奥様は、前夫との間に恭一ぼっちゃんをもうけ、その後平井氏と再婚。
平井の旦那様が建てた「小さいおうち」で、3人の家族とタキが過ごす様が事細かく記されていきます。

読み始めは、少し退屈な物語なのかなと心配したのもつかの間、東京でのモダンな暮らしや、女中の仕事ぶりは物珍しく、だんだん引き込まれていきました。
タキの手記は、時々現代に戻り、タキの又甥にあたる健史が、記述に対し意見を述べている箇所があり、その時代を経験したことのない私のような読者の代弁をしてくれています。

時代は、徐々に戦争へと突き進んでいきますが、平井家やその周辺の人々の生活にじわりじわりと暗い影を落としながらも、身に危険が迫るそのときまで、日々は淡々と営まれる。
むしろ、旦那様は戦争によってもたらされた好景気と会社の発展に喜び、タキは上手にやり繰りをしながら平井家の生活レベルを保とうとし、時子奥様もたおやかに過ごしている様子が伺える。
市井の人、特に社会と関わりの薄い人には戦争がどこか遠くで起こっている他人事のように描かれていて、興味深いです。
それはもちろん、情報が公にされず、行き届いていなかったことが大きな理由になるでしょう。
それだけでなく、混乱のただ中にいた時には、その本流に飲み込まれていることさえ気づかないものなのかもしれません。
きっと、何十年もあとになって振り返ると、あのときはああだった、と知る部分も多いのだと思います。
話は大きく逸れますが、今現在の暮らしぶりは、何十年か先の人たちの目にはどう映っているのだろう、危機感の薄い、ひどくのんびりした様に見えるのだろうか、と思わず重ね合わせて考えずにはいられなくなりました。

最終章は、又甥の健史によって語られます。
そこで知ることになった後日談と、ある事実に、心を大きく揺さぶられました。
これまで読んできたタキの手記を思い返し、語られなかった部分の切なさを思いました。
そして、その時代の持つ暗さを改めて知り、だからこそ「小さいおうち」でのやわらかい光に包まれたように記された温かさが心を打ちました。
読み終えて数日経つ今も、その余韻が残っています。

バージニア・リー・バートンという作家の絵本「ちいさいおうち」と関わりがあるそうですが、残念ながら未読です。
どうやら表紙の絵も、オマージュしている様子。
図書館で探してみたいと思います。
中島京子 | Comments(0) | Trackback(0)
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