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2011/08/23

「家守綺譚」 梨木香歩

家守綺譚 (新潮文庫)家守綺譚 (新潮文庫)
(2006/09)
梨木 香歩

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★★★★

日常にこぼれ出る豊穣な気配。花は人を恋い、水は友を招く――。それは、ついこのあいだ、ほんの百年すこし前の物語。
庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。――綿貫征四郎の随筆「烏〓苺記(やぶがらしのき)」を巻末に収録。
新潮社HPより



少し前に「りかさん」を読んで以来、梨木さんの本をもっと読んでみたいなと思うようになり、以前から気になっていたこの本を借りてきました。
図書館には単行本もありましたが、文庫版の巻末収録も気になったので、文庫本に。

植物がたくさん出てくること、日常と非日常が入り混じった物語であることなど、既読の「f植物園の巣穴」のように、若干の読みにくさがあるのだろうかと思いながら読み進めました。
が、一話一話が短く、可笑しみもあって読みやすい。
(梨木さんの文と世界観への免疫が出来たのかもしれませんが。)

征四郎の素直で人のよいところがなんとも憎めない。
飼い犬のゴローがとてもかわいい。
隣のおかみさんや和尚も、情があって温かい。
庭の植物や、河童や狸や子鬼も、愛らしい。

不可思議の深みへどんどんはまっていくのではなく、その入り口がいつも覗いていて、知らぬ間にその周辺を出入りしているような、心安さがあります。
しとしとと雨の降りしきる静かな部屋の中で、じっくりと味わいながら読みました。

さりげない一場面のなかで妙に心に残った、次のようなやりとりがあります。

――具合でも悪いのですか。
思わず声を掛ける。
――苦しいのです。吐き気がして。頭が割れんばかり。
――大丈夫ですか。
おろおろして思わずそう云ってしまったが、馬鹿なことを云っていると自分でも思った。見るからに大丈夫ではないし、本人もそう訴えているのに。


言いがちな言葉で、私も何とはなしに馬鹿のように使っているので、恥ずかしくなった。
梨木さんの、言葉に対する真摯な向き合い方を垣間見た気がしました。

「葡萄」の、物語の締め方は秀逸。
温かさと不思議の余韻に浸りながら、本を閉じました。
梨木香歩 | Comments(0) | Trackback(0)
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