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2010/11/18

「原稿零枚日記」 小川洋子

原稿零枚日記原稿零枚日記
(2010/08/05)
小川 洋子

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★★★☆

「あらすじ」の名人にして、自分の原稿は遅々としてすすまない作家の私。苔むす宿での奇妙な体験、盗作のニュースにこころ騒ぎ、子泣き相撲や小学校の運動会に出かけていって幼子たちの肢体に見入る…。とある女性作家の日記からこぼれ落ちる人間の営みの美しさと哀しさ。平凡な日常の記録だったはずなのに、途中から異世界の扉が開いて…。お待ちかね小川洋子ワールド。
「BOOK」データベースより




小川さんの本は、最近読んだばかりな気がしますが、予約が回ってきました。

女流作家が書いた日記という形式でつむがれる、不思議な物語。
その作家とは小川さんご本人の投影なのかなと読み進めましたが、ご本人のことをよく知らないので、分かりませんでした。
夢か現か、そんな世界を行ったり来たりしながら、日記は進んでいきます。

たとえ行き当たりばったりに書かれた小説であっても、そこには必ず作者の無意識の計画が張り巡らされており、またTで起こった出来事はほとんどすべてが偶然でありながら、同時に、何ものかの確かな意図によって導かれた結果であった。



私はよく読み取れなかったけれど、この日記物語自体がそうなのでしょう。
着地点の見えなさ、捉えどころのなさに翻弄されながらも、日記を俯瞰してみたとき、作家が抱えている現実と、日記に書かれた文の、二重構造があるような気がしました。

どうやら独り身らしい作家には、とりわけ幼子への執着があるように感じました。
ニュースの最後に赤ん坊を紹介するコーナーを泣きながら見たり、こっそりと運動会や子泣き相撲を見に行ったり、新生児室に立ち寄ったり。
きっと現実には「何か」があったに違いないと思うのだけど、そこは明かされません。

そしてこの物語の中には、「人を失う」場面が多く登場します。

落ち着いて振り返ってみれば、私の人生はすぐそばにいる人を失うことの連続ではなかったか。わこさんとネネさんもZ先生も譜めくりのJ子さんもパーティー荒らしも子泣き相撲の赤ん坊も暗唱クラブの先生もRさんもWさんも肥満児大学生も猫っ毛サラリーマンも皆、私を置き去りにしてどこかに姿を消してしまった。どんなに瞬きをしても、私の網膜にはもはや彼らの姿は映らない。
 ”何の役にも立たなかった”
 この一行を私は日記の中で何度繰り返しただろう。とても数え切れるものではない。



様々な喪失に遭遇するなかで、作家が一番恐れているのは、母を失うことではないか、と感じました。
この日記には、日記でありながら感情の独白や吐露といったものが少なく、ずいぶん抑制されて書かれているように思います。
淡々とした語りの中に、自分では何もできない虚しさや喪失感があふれているような気がしました。
小川洋子 | Comments(0) | Trackback(0)
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