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2010/09/17

「わたしを離さないで」 カズオイシグロ

わたしを離さないでわたしを離さないで
(2006/04/22)
カズオ イシグロ

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★★★☆

実は翻訳本を読むのは苦手です。
中学生くらいまではよく読んでいたのだけど、突然アレルギー反応を起こすようになって。
上手く言えないのだけど、ただ感覚的に、肌に合わないって感じるようになったのです。

こちらの「わたしを離さないで」は翻訳本なのですが、とあるところで絶賛されていたのを以前に見かけてずっと気になってはいました。
それでも、これだけ読むのが遅くなってしまったのは、多少の抵抗感があったからだと思います。

図書館通いを再開して、ふと英米文学の棚にあるこの本に目が留まり、いい機会だし、思い切って借りてみることにしました。
読んでみて、翻訳本を好きになった、とまでは言えないのだけど、でもやはり読んでみてよかったと思いました。
毛嫌いしていてはもったいないです。
でも、私にもう少し英語力があれば、原文を読んでみたい気持ちもあります。

以下、ネタバレにならないように気をつけたつもりの、感想。

この物語は、キャシーという女性が、過去を振り返るところから始まります。
とても静かな語り口で、巻末の解説で「抑制」の効いた文章、とありましたが、まさにそう感じる語り口でした。

キャシーは、ヘールシャムで過ごした子ども時代から回想します。
自身のこと、ルースのこと、トミーのことを中心に。
その回顧を通して、文章の中に散りばめられたいくつかの引っかかる言葉が、はじめは違和感をもたらし、そのうちに不透明な不安感をずっと印象付けるようになります。
ただ、昔語りは淡々と続き、その全容はなかなか明らかになりません。

その不安感の正体は、突如、段階を追いながら明らかになっていきます。
事実への衝撃もですが、それを語る彼女の平静で淡々とした語り口に、また愕然とさせられるのでした。
フィクションとは思いながらも、それが現実の世界でもあり得てしまいそうな、奇妙な錯覚に陥りました。

ある種独特な環境での生活のなかで、子どもたちはみなそれぞれに個としての人格をしっかり形成していく。
人間関係を築き、学び、友情を育み、やがて恋をする。
記憶の端々まで丁寧に紡がれるキャシーの思い出は、正直、辟易するほどに人間的です。
私はどうしてもルースのことが好きになれなくて、彼女と深く関わろうとするキャシーやトミーの気持ちが知れませんでした。
けれど、その彼女さえ運命を受け入れ、静かに全うする。

彼女たちの運命は、抗うことを許されるものではなく、また彼女たちも決して運命自体に逆らおうとはしない。
ただ、その運命の中で、小さな希望を探し、思いを馳せずにはいられない。

とても切なく、読み終えてしばし放心してしまいました。
か行その他 | Comments(2) | Trackback(0)
Comment
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No title
>鍵コメさん
こちらにありがとうございました^^
頑張りましょう!
こちらこそよろしくお願いします☆

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