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2009/09/28

「ひとり日和」 青山七恵

ひとり日和ひとり日和
(2007/02/16)
青山 七恵

商品詳細を見る

★★☆☆

“人っていやね…人は去って行くからね”。20歳の知寿と71歳の吟子さんが暮らした春夏秋冬。第136回芥川賞受賞作。
「BOOK」データベースより



非常に読みやすく、読むのが遅い私でも数時間で読み切りました。
はじめに読んだときは、丁寧に読み取ろうという気持ちが少し自分に欠けていたのかも。
あっという間に読了してしまって、なんだか軽い読み物だったなぁと思いつつ、別の本を読み始めたのですが、ブログに感想を書くためにまた本書をぱらぱらめくっていると、違った表情が見えてきました。
簡単で分かりやすい言葉を使って、読みやすく書いてあるけど、とても練られた物語なのかなと。
スケートのそれぞれの立ち位置の対比だとか、盗み癖の意味だとか、電車という動いていくものとずっとそこにある家とのコントラストだとか、描写で言外に匂わせているものが多い気がします。
変わるもの、変わらないもの、変えるもの、変えないもの、変えられないもの。
これは文学的物語なのかもしれません。
ただ、面白かった!と手放しで言えるかというと…印象に残りにくい話でもあります。

以下ネタバレ箇所があります。
主人公の知寿は、二十歳でフリーターの女の子。
冷めているというか、白けているというか、感情表現の乏しい感じがします。
孤独感や不安感を持ち、そんな自分をやるせなく思う気持ちはあるものの、それを変えたいという積極性はなく、惰性のようにふらふらとなんとなく、ぬるい日々を送っているように見えます。
将来に漠然とした望みのようなものはあるけど、具体的なビジョンは描けないし野心もない、自分からなるべく波風を起こしたくない、というのは、今の私にもあてはまることで、耳の痛い話。

母親が仕事で海外へ移るのをきっかけに、東京の遠縁のおばあさんのところへ居候することになり、七十一歳の吟子さんとの二人暮らしが始まります。
吟子さんは、知寿に特別構うでもお説教するでもなく、また自分の生活を変えるでもなく、そのままを受け入れます。
始めはぎこちなかった二人の生活も、徐々にペースができてき、知寿が吟子さんに対して時々意地の悪い言動をとってしまうのも、慣れ故のことかもしれません。
二人の会話のシーンが好きでした。

ゆるやかに春夏秋冬が過ぎ、その間に知寿も吟子さんも恋をします。
読み手としては大きな出来事も事件もなく、少し拍子抜けしたのですが(お年寄りとの二人暮らしの話といったら、その方が亡くなるパターンがすごく多いと思うのですけど、そんなこともなく。)、人間の一年にそうそう波乱万丈なことが起きるものでもないですよね(本人たちにしてみればそれでも十分波乱万丈なのだと思うし)。
そんな、とても日常的な日々のなかで、知寿がほんの少しだけ変わっていく姿を最後に見ることができます。

「吟子さん。外の世界って、厳しいんだろうね。あたしなんか、すぐ落ちこぼれちゃうんだろうね」
「世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょ」
じんと染みる言葉です。
外の世界、狭い世界、住む世界だとよく言って、世の中には線引きがあるように思えてならないのだけど、俯瞰して見てみれば世界は一つしかない。
そう考えれば、少しは楽になるような気がしました。
あ行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
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