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2009/09/24

「代筆屋」 辻仁成

代筆屋 (幻冬舎文庫)代筆屋 (幻冬舎文庫)
(2008/04)
辻 仁成

商品詳細を見る

★★☆☆

何かを待つ、というのは大事なことだ。待っているものが来ると信じているあいだは、不思議なほどに力が湧く。手紙を待つ、という行為には生きる希望が潜んでいる。手紙を書くことには力がいるが、手紙によって勇気が生まれる。私はその力を信じてみたかった―。手紙の代筆で人助けをする、売れない作家の日々。人生観を変えるハートフルストーリー。
「BOOK」データベースより


紹介文を読んで読んでみたくなり、久々に辻さんの本を手に取りました。
ご自身の実話がモチーフになっているのか、それともその体で書かれているのかよく分からなかったのですが、ある作家が売れない時代に代筆屋として稼いでいた頃の、10のお話です。

代筆の手紙は、ちょっと独りよがりだと思うものが多かったかな。
なかでは、第8章『八十八歳の私より』の最後の手紙が、違和感なくよかったと思います。
でも、できればそれを相手には渡さないでいてほしいな、とも思いました。

手紙の代筆を請け負うなかで、人生相談さながらに、依頼主の考えを諭したり、後押ししたりと、いい方向へ導いていく話も多数あります。
代筆という仕事の出来そのものよりも、依頼主の心情に揺さぶりを起こすことのほうが、私には大きなことのように思えました。
だから個人的には、結局その代筆の手紙を渡さなかったパターンの話のほうが好きです。

というのも、読み物としては面白かったのだけど、手紙を代筆するということそのものになんだか疑問を感じてしまい、そこにひっかかりを感じたまま読み終えてしまったからです。
例えば、公に向けた手紙であるとか、改まった手紙であれば、書き方や文章に悩んで代筆を頼むのも分かるのです。
でも、相手が自分の家族や昔からの友人、かつての恋人に宛てたものであるなら、代筆屋が文章を考え、本人に筆跡を似せて書いた手紙をそのまま渡すというのは、後ろめたくないのでしょうか。
意中の相手へのラブレターを代筆屋が書いて、たとえその恋が実ったとしても、それからのお付き合いの中で、手紙と本人の落差なく過ごすことができるでしょうか。
また、依頼主は隠し事をしているという負い目を感じないでいられるでしょうか。

代筆屋の下書きをお手本にしながら自分の言葉で書くとか(第7章のように)、自分で書いたものを代筆屋に添削してもらうとか、助力を得る程度なら、まだ誠意が感じられます。
また第4章や第10章のように、本人が書けない事情がある場合もあり、それはそれで分かるのです。
でも、もしそのもらった相手が手紙の代筆に気付いたら、大きなショックを受け、怒ってしまうのでは。
大切な人からの手紙が、もし他人が成り代わって書いたものであったなら、私はとても嫌です。
それを気付かれないように書くのが、代筆屋のすごさなのかもしれませんが。
どんなに稚拙でもいいから、悩みながら、自分の言葉で、自分の字で書くからこそ、言葉に、手紙に、思いが宿るのではないでしょうか。
そう思ってしまうのは、私が不得手ながらも手紙を書くことがそこまで苦ではない人間だからかもしれませんが。

そんなもやもやとした思いがずっと心にあり、小説自体を存分に楽しめなかったのが残念でした。
た行その他 | Comments(2) | Trackback(0)
Comment
うぉぉ!辻作品アップされていました。
まりもさんの感想、勉強になります!!
さしでがましくも、私の感想も少し書かせていただきますね!

たしかにこの本は微妙でした。小説?エッセイ?と一瞬錯覚しそうになる設定ですし。

手紙の代筆って、現実的には、きっとバレバレですよね。

ただ、読みながら私もひとつだけ代筆を頼みたい手紙があるなー・・・と想像しました。
でもそれは、過去の自分のなかでも、病んだ部分の自分がやった事に対して、です。

登場人物たちが代筆を依頼する事によって、弱さとか、後悔とか、・・・病んだ部分をさらけ出していく姿が印象に残っていて、信憑性に欠けてたり、非現実的な部分にはあまり目がいかなかったかな・・・という印象でした。

確かに、例えば自分の夫(およそ手紙など絶対に書かないであろう人柄)が代筆依頼した手紙を私にくれたとして、読んだら絶対に私は本人がかいたのではないと分かる!(断言できる!(^^;)けど、代筆頼んでまで手紙で伝えたい事があったのかなと思うと、ちょっと嬉しいかも・・・などと、そういった非現実に逃避できた作品でした。

なんにせよ、ファンタジーを読んだという感覚・・・かもですね。
コメントありがとうございます♪

私も、依頼主の心情が顕になっていく過程で、本人がそれぞれの気付きをもたらすところにこの本のよさを感じました。
でも、代筆を媒体にしてそれを表現するということが、現実味の面でも私の気持ちの中でもうまく噛み合わなかったんですよね。
リアリティはなかったけど、こういう作品が書ける辻さんは、すごくロマンチックで感性の豊かな人なんでしょうね^^

あ、分かります!
私も自分に対する手紙というのは読んでみたいです!
ちょっと怖くもあるのですけど(苦笑)

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