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2011/09/29

「ざらざら」 川上弘美

ざらざらざらざら
(2006/07/20)
川上 弘美

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★★★☆

熱愛・不倫・失恋・片思い・男嫌い・処女、そしてくされ縁・友愛・レズビアン。さまざまな女性の揺れ動く心情を独特のタッチで描いた名品揃い。クウネル連載20篇に他誌発表作3篇を加えた、ファン注目の川上ワールド。マガジンハウスHPより



先週の旅のお供に、薄くて軽くてさらさら読めるような短編小説を探していました。
そしてできればハズレのない既読の作家さんがいいかなと。
川上弘美さんの著作は8割くらい読んでいるつもりなのですが、本作はまだ読んでいなかったので、こちらをチョイス。

23のショートストーリー。
短く切り取られた場面や時間のなかに、川上さんらしさがにじみ出ていて好きだなぁ。
きっと、ひと月もすればどのストーリーもほとんど忘れているに違いないけれど、何かの拍子に読み返したとき、また新鮮な気持ちで味わえるだろうなと思います。

特によかったののが、以下の4つ。

「月世界」
千寿ちゃんの言葉が印象的。

時間差なの? わたしが聞くと、なんでも時間差なのよ、風邪とか失恋とか嫉妬とか、みんな悪いことは時間差で攻めてくるのよお。千寿ちゃんが真面目に答えるので、私はまた笑った。




「山羊の草原」
他はどれも単独のストーリーだけれど、この物語だけ「コーヒーメーカー」とつながっている。
「コーヒーメーカー」のアン子は、どこか危うい感じがするので、ああやっぱり、と思った。
そばで適切な助言をくれる、修三ちゃんの優しさがじわじわと温かくて好きなお話。


「淋しいな」
失恋した女の子の話で、一番興味深く読んだ。
別れ話を切り出されたときの、「え?」と言った自分のばかみたいな声ばかりが思い出されること。
泣く描写も「すすりあげてみる。えんえん、と声も出してみる。」と、半分くらい自発的な行為で、目の腫れを気にしたり、まったく関係のないことを突然思い出したりしている。
涙にひたりながらも、どこかで冷静、どこかで客観視。
ものすごくリアリティがあった。


「笹の葉さらさら」
家庭環境から恋に、男に頑なな女の子が、「しゃちほこばって」生きている。
種田くんと付き合うことで、かわっていくかなと思ったけれど、少し遅かった。
最後の協子伯母の言葉がいい。
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川上弘美 | Comments(0) | Trackback(0)
2011/09/13

「遠くの声に耳を澄ませて」 宮下奈都

遠くの声に耳を澄ませて遠くの声に耳を澄ませて
(2009/03)
宮下 奈都

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★★☆☆

くすんでいた毎日が、少し色づいて回りはじめる。錆びついた缶の中に、おじいちゃんの宝物を見つけた。幼馴染の結婚式の日、泥だらけの道を走った。大好きな、ただひとりの人と、別れた。ただ、それだけのことなのに。看護婦、OL、大学生、母親。普通の人たちがひっそりと語りだす、ささやかだけど特別な物語。
「BOOK」データベースより


はじめましての作家さん。
たしか「スコーレNO.4」が有名だったと思いますが、レビュー等で評価が高くて気になったこちらから借りてみました。

12編の短編集で、少しずつリンクしています。
登場人物同士にもう少し関わりがあるかなと思ったけど、そうでもない人も多かったな。

・アンデスの声
・転がる小石
・どこにでも猫がいる
・秋の転校生
・うなぎを追いかけた男
・部屋から始まった
・初めての雪
・足の速いおじさん
・クックブックの五日間
・ミルクティー
・白い足袋
・夕焼けの犬


これを読んだのが、ちょうど生活も気持ちも忙しく、バタバタしているときでした。
そういうときは、何も考えずにさらさら読めるタイプの本か、すごくのめり込んで読める本が私には向いてるので、少し選択ミス。
読みやすい文章ではあるのだけど、すべて一人称で話が進み、いわゆる自己紹介的な文がないので、語り手のひととなりについてわりと注意深く読み進めないといけなかったし、他の話とのリンクも気になりながら読んだので、かなりスローペースに。
短編集ということもあってか、いまひとつ盛り上がりに欠けたかなという印象もあります。
心が落ち着いているときに読み直せば、また違った感想になるのかも。

とりわけよかったのが「うなぎを追いかけた男」。
看護師の「潜る」という事象にどきっとしたのと、妹とのやりとりが深い。
問題アリの患者高田さんと、同室の濱岡さんの会話に心がぎゅっとなる。
これに続く最終話の「夕焼けの犬」とのセットで、いいお話でした。

わざわざ台湾に行って医者に診てもらう「部屋から始まった」も好きでした。
「むずむず」する気持ちからの心の動きが、読んでいて心地よかったです。

次は、長編の「スコーレNO.4」を読んでみたいな。
ま行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2011/09/05

「村田エフェンディ滞土録」 梨木香歩

村田エフェンディ滞土録村田エフェンディ滞土録
(2004/04/27)
梨木 香歩

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★★★☆

町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。異国の若者たちが囲む食卓での語らい。虚をつく鸚鵡の叫び。古代への夢と憧れ。羅馬硝子を掘り当てた高ぶり。守り神同士の勢力争い―スタンブールでの村田の日々は、懐かしくも甘美な青春の光であった。共に過ごした友の、国と国とが戦いを始める、その時までは…。百年前の日本人留学生村田君の土耳古滞在記。
「BOOK」データベースより



またまた梨木さんの本。
先日読んだ「家守綺譚」で、綿貫に土耳古(トルコ)から手紙を送った、学生時代の友人村田の話ということで借りてきました。
エフェンディというのは、おもに学問を修めた人物に対する敬称だそうで、先生という意味にあたるようです。
妙なタイトルだなと思ったのですが、村田先生の土耳古(トルコ)滞在記、といったところでしょうか。

雑多で多種多様な人間、文化、風習、宗教が入り乱れていた、当時のトルコ。
村田は、そこで出会った人たちと、時に反目しながらも交流を深めていきます。

最初のうちこそ順調に楽しく読み進めて行ったんですが、だんだんとペースダウン。
地理的なことから当時の世界情勢、時代背景、文化、宗教等、話が深くなるにつれ、自分の知識が乏しくて理解に時間がかかりました。

私には難しかったけれど、最後までよんでよかった。

ムハンマドが拾ってきた鸚鵡(オウム)が面白い。
どこで覚えたか、「悪いものを喰っただろう」「友よ」「いよいよ革命だ」「繁殖期に入ったのだな」「失敗だ」の5つの言葉を発します。
まるで人間の言葉が分かるかのように、それはもう絶妙なタイミングで。
このあたりのユーモアが、重くなりがちな話の緩衝材となっていました。
さらにいくつか覚えるのですが、それも物語の重要なポイント。
そして物語最後のひと鳴きに涙があふれました。
ことさら、雪の日で三人が童心にかえったように戯れた様子が浮かんできました。

村田と同じ屋敷に下宿しているギリシャ人、ディミィトリスの言葉は、印象的なものが多かったです。

繰り返すのだ。勃興、成長、成熟、爛熟、腐敗、解体。これはどうしようもないのだろうか。


その善き貧しさを、保つことだな。西の豊かで懶惰(らんだ)な退廃の種を、君たちが持ち帰らないようにすることだ、村田。


はたして、今の日本は。
梨木香歩 | Comments(0) | Trackback(0)
2011/09/01

「夜市」 恒川光太郎

夜市夜市
(2005/10/26)
恒川 光太郎

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★★★☆

大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から「夜市にいかないか」と誘われた。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。夜市では望むものが何でも手に入る。小学生のころに夜市に迷い込んだ裕司は、自分の幼い弟と引き換えに「野球の才能」を買ったのだという。野球部のヒーローとして成長し、甲子園にも出場した裕司だが、弟を売ったことにずっと罪悪感を抱いていた。そして今夜、弟を買い戻すために夜市を訪れたというのだが―。第12回日本ホラー小説大賞受賞作。
「BOOK」データベースより



恒川光太郎さんの著作を初めて読みました。
ホラー小説大賞受賞ということで、背筋がぞくぞくするのかなという予想に反して、幻想的な怪奇譚でした。

デビュー作でこの完成度。
静けさを感じる筆致は簡潔で、場面をイメージしやすく、読みやすいです。
いずみの不用心さは少し気にかかりましたが、気構えて読んでいる読者をハラハラさせる効果あり。

実は「夜市」の後に「風の古道」が収録されているというのを気付かなくて、実際はもう終盤のところで、まだまだページ数があるからどんなふうに展開していくんだろうと思ったら、終わってしまった!という軽い衝撃とともに読み終えました(笑)
そういう読み手側のミスって、作品の善し悪しに関係なく読後の印象に響きますね。
というわけで、「風の古道」のほうがよく感じましたが、どちらも面白かったです。

両方の物語のなかに、夜市や永久浮浪者という言葉がさりげなく共通して出てきますが、これは恒川さん独自の壮大な世界観の一端なのでしょうか。
その世界観が、これからどんな物語を紡いでいくのか、他の作品も読んでみたくなりました。
た行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
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