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2010/10/25

「夜明けの縁をさ迷う人々」 小川洋子

夜明けの縁をさ迷う人々夜明けの縁をさ迷う人々
(2007/09)
小川 洋子

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★★★☆

もしあなたが世界からこぼれ落ちても、私が両手をのばして、受け止めよう―『博士の愛した数式』『ミーナの行進』の小川洋子が世界の片隅に灯りをともす、珠玉のナイン・ストーリーズ。
「BOOK」データベースより



図書館に返却してしまったので、簡単に覚え書きを。

小川洋子さんの描く、現実と非現実の狭間を行き来するような不思議な物語、9編。
どれも短いお話ですが、それぞれにぎゅっと濃縮された濃い世界観が広がっていて、美しく豊かな表現力から想像をかき立てられます。
妖しく、なまめかしい話もあれば、背筋がすっと寒くなるような話、せつなくなる話など様々です。
人間が何か、あるいは誰かに執着する心が生み出すものを描いたお話が多いように感じました。
密やかでひんやりとした、静かな短編集です。

好きなのは、「イービーのかなわぬ望み」「パラソルチョコレート」「再試合」。
印象的だったのは、「教授宅の留守番」「涙売り」「ラ・ヴェール嬢」。

「涙売り」は、涙が楽器の音色を美しくするというのはもちろんのこと、涙の種類で価値がかわるという着眼点がとても面白いと思いました。
たしかに、たまねぎで出した涙は、価値が低そうな感じがする(笑)
自己犠牲で成り立つ商売の少女が、恋をして、究極の犠牲を払った結末。
痛々しく、せつなかった。

最終話の「再試合」。
時の流れの感覚を奪われるような、とても不可思議なお話でした。
終わらないでいつまでも続いてほしい、ずっと見ていたい、そんな感情を抱くことはよくあります。
私はスポーツにはあまりないのだけど、例えば、映画、ドラマ…そして本。
そういう人間心理を突き、しかもそれを最終話に持って来るところが、また上手いなぁと。
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小川洋子 | Comments(0) | Trackback(0)
2010/10/20

「長い終わりが始まる」 山崎ナオコーラ

長い終わりが始まる長い終わりが始まる
(2008/06/26)
山崎 ナオコーラ

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★★☆☆

大学4年生の小笠原は、マンドリンサークルに入っている。未来になんて興味がなく、就職活動よりも人間関係よりも、趣味のマンドリンに命をかけている。そして、とても好きな人がいる。いつまでも流れていく時間を描いた青春文学。
「BOOK」データベースより

うーん、残念。
山崎ナオコーラさんの著書は数冊読んで、おもしろい文を書く作家さんだなと思っていますが、このお話は今の私にはどうもはまれませんでした。

小笠原は、自分に正直だけど不器用で面倒くさい女だと思ったし、田中は、最初掴めなかったけど結局はずるくていけ好かない男だとしか思えなかった。
小笠原はともかく、田中のことがそういう印象なので、田中に恋する小笠原の気持ちさえもピンとこなくて(それが恋というものなんでしょうけど)、惹きこまれもせず、盛り上がりもせず。
きっと著者は、そういう恋愛への感情移入をしてほしくてこの話を書いたわけではない気がするので、もっと読み取る努力をするべきだったのかなと思うのだけど、字面のままにさらりと読み終えてしまいました。

でも題名は好き。
私自身、物事に永遠、絶対というものは滅多になくて、いつかは終わりが来ると思っています。
それは、はじめから終わりに向かって進んでいるとも言えるのだから、「長い終わりが始まる」は言い得て妙だなと。

それにしても、終わりを認識する感度を、人間はどのように身につけてきたのか。
日本文学の授業で、「小説や音楽のような、時間性のある芸術は、必ず終わりの予感があるものである」と習ったが、小笠原には終わりの感覚が分からない。終わってない、全然終わってない。


小笠原が音楽について考えてみたときに出てくる文章だけど、もちろん自分自身に起こることの感覚についても言っているんでしょう。

終わりの感覚。
敏感な人もいれば鈍感な人もいるし、他人のことはよく分かっても、自分のことは分からなかったり、思い返せば気付くことも、そのときには気付かなかったり、あるいは気付きたくなかったりするのかもしれません。
や行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2010/10/20

「トリツカレ男」 いしいしんじ


トリツカレ男 (新潮文庫)トリツカレ男 (新潮文庫)
(2006/03)
いしい しんじ

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★★★★★

ジュゼッペのあだ名は「トリツカレ男」。何かに夢中になると、寝ても覚めてもそればかり。オペラ、三段跳び、サングラス集め、潮干狩り、刺繍、ハツカネズミetc.そんな彼が、寒い国からやってきた風船売りに恋をした。無口な少女の名は「ペチカ」。悲しみに凍りついた彼女の心を、ジュゼッペは、もてる技のすべてを使ってあたためようとするのだが…。まぶしくピュアなラブストーリー。
「BOOK」データベースより



新幹線の移動中に読むために、とにかく薄くて軽い本という基準だけで図書館で借りてきました。
まさか、こんなに素敵なお話だとは想像していなくて、この本との出会いに感謝です。

第1章では、ジュゼッペがトリツカレ男と呼ばれる所以がユーモアたっぷりに描かれていて、惹きこまれ。
第2章では、そのジュゼッペが、ペチカという女の子に恋をして、ジュゼッペと一緒にドキドキし。
第3章、第4章では、ペチカの笑顔のために最大限の力をふりしぼるジュゼッペの姿と、その真っ直ぐでひたむきな思いに心を打たれ。
第5章、最終章では、その結末に心が温かくなり、幸せな気持ちでいっぱいになりました。

せつなくて、温かくて、とにかく素敵な物語です。
恋愛小説では、川上弘美さんの「センセイの鞄」が一番好きなお話でしたが、このお話はまた違った恋の物語として、ずっと私の心に残るお話だと思います。

「そりゃもちろん、だいたいが時間のむだ、物笑いのたね、役立たずのごみでおわっちまうだろうけれど、でも、きみが本気をつづけるなら、いずれなにかちょっとしたことで、むくわれることはあるんだと思う」

あ行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2010/10/05

「アイスクリン強し」 畠中恵

アイスクリン強しアイスクリン強し
(2008/10/21)
畠中 恵

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★★★☆

ビスキット、チヨコレイト、アイスクリン、シユウクリーム、スイートポテト。南蛮菓子から西洋菓子へと呼び名が変わり、新たな品々が数多登場。そんなスイーツ文明開化の東京で、孤児として生まれ育った真次郎は、念願の西洋菓子屋・風琴屋を開いた。そこには今日もまた、甘い菓子目当てに若い元幕臣の警官達がやってくる。菓子作りの修業に精を出したい真次郎に、厄介事が次々と…。著者の魅力全開!明治の築地居留地で、西洋菓子屋の若主人と元幕臣の警官達「若様組」が繰り広げる「スイーツ文明開化」騒動記。
「BOOK」データベースより



物語は、明治二十三年の東京を舞台としています。
畠中恵さんは、「しゃばけ」シリーズの印象が強くて、つい江戸時代のお話が得意なのかなと思っていましたが(他のシリーズもそうだし)、今回は明治時代。
鎖国が終わり、文明開化で西洋の文化が怒涛のごとく入り込んでき、そこらじゅうに新しいものが溢れ、政府が移ってこれまでの生活ががらりと変わる、そんな時代に生きる若者たちを描いたこの物語、興味深く読みました。

畠中さんの描かれる物語は、どこかほんわかしていて、切実さというか現実味はいつも少し薄いのですよね。
だから、歴史小説というよりは、明治時代によく似た世界のファンタジーっぽくも感じるのですが、一話一話は面白くて、あっという間に読み終えました。

ただ、1冊の単行本として読んだときには、話と話がつながらない部分もあり、読者には少し不親切。
特に、「ゼリーケーキ儚し」の後にそのまま「ワッフルス熱し」と続くところは、私がページを読み飛ばしたのかと、少し前を見直してしまったほどです。

うやむやになっているところが、今後シリーズ化されることによって、丁寧に掘り下げて描かれていくのならいいのだけど、この1冊で完結となると残念です。
ということで、続編希望です!


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畠中恵 | Comments(2) | Trackback(0)
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