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2009/11/25

「きみはポラリス」 三浦しをん

きみはポラリスきみはポラリス
(2007/05)
三浦 しをん

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★★★☆

これって恋or愛?いえ、これこそ恋愛そのもの。世間の注目も原稿の注文も「恋愛」のことばかり。なら、とことん書いてみようじゃないの!ということで生まれたただならぬ「恋愛短篇集」。初恋、禁忌、純愛、結婚、信仰、偏愛、同性愛…本気で恋し、だれかを愛したいなら読むしかない!われらの時代の聖典。
「BOOK」データベースより



何度か読むチャンスがあったのに時間の都合などで返却してしまい、今までずっと読めずにいた本です。
だからちょっと期待値が上がってしまっていたのかな。
それぞれに面白かったのだけど、読み終えて充足感をあまり得られなかったような。

以下12編収録。

永遠に完成しない二通の手紙  …お題「ラブレター」
裏切らないこと  …自分お題「禁忌」
私たちがしたこと  …自分お題「王道」
夜にあふれるもの  …自分お題「信仰」 
骨片  …お題「あのころの宝もの」
ペーパークラフト  …自分お題「三角関係」
森を歩く  …お題「結婚して私は貧乏になった」
優雅な生活  …自分お題「共同作業」
春太の毎日  …お題「最後の恋」
冬の一等星  …自分お題「年齢差」
永遠につづく手紙の最初の一文  …自分お題「初恋」

本書の巻末に、あらかじめ提示されていた「お題」、特に指定がなくしをんさんが設定した「自分お題」が載っていて、それを意識しながら読むのもおもしろかったです。
しをんさんの「王道」と「三角関係」って…やはり一筋縄にはいきませんね(笑)

「冬の一等星」に

八歳の冬の日からずっと、強く輝くものが私の胸のうちに宿っている。夜道を照らす、ほの白い一等星のように。それは冷たいほど遠くから、不思議な引力をまとっていつまでも私を守っている。

という文があるのですが、「きみはポラリス」という小説タイトルはここからとられたのでしょうか。
ポラリスというのは、北極星のことなんだそうですね。
動かない、目印となるような星を相手になぞらえるなんて、ロマンチックです(笑)

「裏切らないこと」は、最初から度肝を抜かれました(苦笑)
でも、この話を通して語らんとすることは、心にすっと入ってきたかな。

なぜ女たちは、血のつながった男には深い寛容と信頼を見せ、他人である男には素っ気ないとも言える警戒を見せるのか。

結婚し長年暮らしている相手でさえ、本能的な部分では「他人」である、と感じるいうのが妙に面白くて心に残りました。

「骨片」は、ちょっと気味が悪く、余韻の残る話でした。
「それ」を隠し持ち愛でることで、その時代の女性の立場への思いや、遂げることのなかった行き場のない想いなど、自分の内面を慰めていたのでしょう。
「その世界を狭いと思う人がいるでしょうか。」という先生の言葉が胸にしみました。

「優雅な生活」は一番安心してほっと読めたお話(笑)
二人の意地の張り合いとやりとりが楽しくて、さらりと楽しめました。

「春太の毎日」も、すぐにネタバレしてしまうけど、かわいらしいお話。
小説ならではの面白さです。
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三浦しをん | Comments(0) | Trackback(0)
2009/11/17

「f植物園の巣穴」 梨木香歩

f植物園の巣穴f植物園の巣穴
(2009/05/07)
梨木 香歩

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★★★★

植物園の園丁は、椋の木の巣穴に落ちた。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、烏帽子を被った鯉、幼きころ漢籍を習った儒者、アイルランドの治水神…。動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす会心の異界譚。
「BOOK」データベースより


返却してしまったので簡単に覚え書き。
梨木香歩さんの本は、10年ほど前に「からくりからくさ」「エンジェル エンジェル エンジェル」「西の魔女が死んだ」を読んだことがあります。
特に「エンジェル エンジェル エンジェル」は、とても心に響いたお話だった記憶があります。

さて、本作はというと、とても読みにくかったです。
かつて読んだ作品が比較的読みやすいものだったので、正直驚きました。
その書き口は、ついてこれる人だけついて来なさい、といっているかのようにさえ感じたほどでした。
まず主人公の男性の口調が硬い。
今よりも少し時代が遡るのかなという角張った印象。
そしてその語られる、夢と現実が、あるいは過去と現在が入り混じったような世界がとても突飛で不可思議で、内容をなぞるのに精一杯。

でも不思議と読むのをやめようと投げ出す気は起きず、時間はかかったけど最後まで読みました。
結末に辿り着いて本当によかった。
無秩序な世界のようでいて、そこにはちゃんと意味があり、すとんと心に落ち着いたのでした。
じんわりとしみ、優しく切ないお話でした。
本文にちらりと出てくる、芋虫が蛹から蝶へと変化し成長するさまが、主人公自身の心の変容と重なり、混濁した液状化の世界から新たな意味を持った現実へと飛躍する物語と重なって感じました。

この物語にはいくつかの穴が出てきます。
木のうろの穴、虫歯の穴、はたまた記憶の穴だったり。
私は常々、どんな穴にも暗くて中がよく見えず、じっとりと湿って、なんとなく吸い込まれそうな得体の知れない空恐ろしさがあると思っていたので、ここで描かれるその心もとない感覚にどきりとしたのでした。
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梨木香歩 | Comments(0) | Trackback(0)
2009/11/05

「ブラフマンの埋葬」 小川洋子

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)
(2007/04/13)
小川 洋子

商品詳細を見る

★★★☆

ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している“創作者の家”。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた―。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。第32回泉鏡花賞受賞作。
「BOOK」データベースより



小川洋子さんの描く、独特の空気感が好きです。

おそらくどこか外国の片田舎が舞台となり、その森の近くにある「創作者の家」を管理・世話している「僕」が語る物語。
その村は、しっとりと静かで、寂しく閉ざされ、孤独と死の臭いを感じるような気がします。
碑文彫刻、石棺、埋葬人、ラベンダーの箱、古代墓地。
そんな言葉が印象的な、ひんやりと湿った、静かな村。
創作者の家というのは、芸術家のために無償で提供している作業用ペンションのようなもの。
そこを訪れる芸術家たちは、滞在の長短、常連か一見か、1人であるいは誰かを連れて来るか等、様々。
ただ、碑文彫刻師1人をのぞいて、いずれは去っていく存在です。
「僕」は、彼ら芸術家と一定の距離を保ち、邪魔をしないことを心がけます。

芸術家たちの手が苦悩している間、僕はガスレンジを磨いている。車庫のペンキを塗り替えている。落ち葉を集めて燃やしている。僕の手は何も創り出さない。


管理人としてずっと居続ける「僕」が、どのような背景を持つ人物なのか、それまでの生い立ちも、本人の家族の話も、何も語られていないので分かりません。
縁もゆかりもない家族写真を骨董市で購入し、部屋に飾る「僕」。
そこに写っている家族の全員が、おそらく死んでいるだろう古い写真です。
直接書かれなくとも、彼が持つ深い孤独と寂しさを感じてしまいます。

ひっそりと続く静かな毎日に、闖入者が突如現れるところから、この物語は始まります。
傷ついているところを保護し、「ブラフマン」と名付けた小動物。
ブラフマンが何の動物かの記載は一切ありません。
私のイメージではアライグマ(ラスカル的な 笑)なのですが、イタチやカワウソの類なのか、そもそも実在する動物なのかも不明。
あれこれ想像するのも楽しいけれど、謎を意味する「ブラフマン」と名付けられたその生き物の正体は、大きな問題ではないのかもしれません。

愛らしく自由奔放に振る舞うこの動物の世話を続けるうち、ブラフマンが「僕」にとってかけがえのない存在になっていきます。
「僕」の生活に色と温度をもたらし、癒し、心にも温もりを与えたのです。
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小川洋子 | Comments(2) | Trackback(0)
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