--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
2007/10/31

10月の読了本

「螺鈿迷宮」 海堂尊 ★★★☆☆
「シンデレラ・ティース」 坂木司 ★★★★☆
「めぐらし屋」 堀江敏幸 ★★★☆☆
「さようなら、コタツ」 中島京子 ★★★☆☆
「図書準備室」 田中慎弥 ★☆☆☆☆
「ふじこさん」 大島真寿美 ★★★☆☆
「FINE DAYS」 本多孝好 ★★☆☆☆
「ティッシュペーパー・ボーイ」 有吉玉青 ★★★☆☆
「Rのつく月には気をつけよう」 石持浅海 ★★★☆☆
「あなたがここにいて欲しい」 中村航 ★★★★☆
「しずく」 西加奈子 ★★★★☆
「株式会社ハピネス計画」 平山瑞穂 ★★★☆☆
「エスケイプ/アブセント」 絲山秋子 ★★★☆☆
「ししゃも」 仙川環 ★★☆☆☆
「片耳うさぎ」 大崎梢 ★★★☆☆


以上、15冊でした。
振り返ると、「しずく」が特によかったです。
苦手、読まず嫌いの作家さんが好きになった点では、「シンデレラ・ティース」「あなたがここにいて欲しい」の2作も大きな収穫でした。
他の作品も読んでみたくなりました。
スポンサーサイト
各月の読了本 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/30

「片耳うさぎ」 大崎梢

片耳うさぎ片耳うさぎ
(2007/08)
大崎 梢

商品詳細を見る

★★★☆☆

父親の事業の失敗で、住み慣れたマンションを離れ、父親の実家に身を寄せることになった小学6年生の奈都。
父の実家は、かつては大庄屋を務めていたほどの名家で、村では有名な古くて大きなお屋敷。
そこには冷たい祖父や厳しい大叔母、叔父家族らが住んでおり、居候身分の奈都と母親は、随分肩身の狭い思いをしていた。
父親は残務処理でシンガポールに行っており、そのうえ、ある日母親まで奈都を残して母方の祖母の看病で、数日出かけてしまう。

古くて大きなお屋敷が恐ろしく、心細くてたまらない奈都は、同級生祐太に紹介され、古い建物が大好きなねえちゃん、中学生のさゆりに泊まりにきてもらうことに。
ところがさゆりは好奇心旺盛で古いお屋敷に興味津々。
奈都は嫌々ながら、探検に連れ出されてしまうのです。

見取り図が用意してあるので、家の様子を把握するまでそれを何度も見つつ読んでいきました。
屋根裏、隠し階段、納戸、蔵、と昔のお屋敷ならではの家の構造がおもしろく、二人の冒険のドキドキする感じが伝わってきてよかったです。

屋根裏の暗がりで誰かの気配を感じたり、部屋に片耳を切られたうさぎの人形が置かれていたりと、背筋が寒くなるような出来事が次々に起こりますが、語り口と奈都たちのキャラクターがそこまで怖く思わせません。

うさぎはこの家では不吉を意味し、うさぎにより死人が出るから「うさぎは入れるな」という昔からの言い伝えがあります。
片耳うさぎは誰なのか? 曽祖父の時代に何があったのか? お屋敷の秘密の場所とは?
奈都が、さゆりとともにその謎を解こうとおっかなびっくり奮闘するあたりは、一気に読めました。
弱虫で怖がりの彼女が、徐々にたくましく成長するところも丁寧に描かれています。

以下少しネタバレしてます。
>>続きを読む
あ行その他 | Comments(2) | Trackback(0)
2007/10/25

「ししゃも」 仙川環

ししゃもししゃも
(2007/07)
仙川 環

商品詳細を見る

★★☆☆☆

一流商社をリストラされ北海道の故郷に帰ってきた川崎恭子。失意の彼女が目にしたのは、さびれた町の風景だった。若者は町を去り、シャッターを閉めた店ばかり。このままでは、町にも自分にも明るい未来はない。そんな恭子が地元の水産試験場で虹色に輝く不思議なししゃもと出会う。その味の素晴らしいこと。「虹色ししゃもで町おこしだ――!」恭子は売り込みに奮闘するが……。
祥伝社HPより


表紙の装丁のかわいさにほだされた感があります(笑)
最終章がなければ、★1つでした。

主人公恭子の無鉄砲な強引さと、私はみんなとはちがうという自負、町の人たちを下に見ているかのような傲慢さが鼻についてしょうがなかったです。
東京の一流商社で働いていたのだから、町の人と感覚が合わないのも当然なのに、かつての同級生に
「悪いけど、やっぱりこういうところにずっといると、世の中の動きがみえなくなってしまうのかしらね」
と平気で言ったり、心配する両親に
「黙って見ていてくれればいいのよ。この件について、できることなんか何もないでしょ?」
なんて言い放つのに、いちいち反感を覚えて、共感できませんでした。
悪戦苦闘しながらも、めげないバイタリティはすごいとは思いますけど。
こういうお話は、主人公を応援したい気持ちにならないと乗ってこないんです。(私の心が狭いのでしょうかね 笑)

町の人たちも、生活がかかっているとはいえ利己的で、どこか人任せ。
こんな調子で「ししゃもで町おこし」はどうなっていくんだろう、というところでこの事業のキーマンが失踪してしまうあたりから、少しミステリー要素が入ってきます。
キーマンは何故、どこへ消えてしまったのか、この計画は成功するのか?

以下ネタバレです。
>>続きを読む
さ行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/24

「エスケイプ/アブセント」 絲山秋子

エスケイプ/アブセントエスケイプ/アブセント
(2006/12)
絲山 秋子

商品詳細を見る

★★★☆☆

闘争と潜伏にあけくれ、20年を棒に振った「おれ」。だが人生は、まだたっぷりと残っている。旅先の京都で始まった、長屋の教会での居候暮らし。あやしげな西洋坊主バンジャマンと、遅れすぎた活動家だった「おれ」。そして不在の「あいつ」。あきらめを、祈りにかえて生きるのだ。―いつわりと挫折の日々にこそ宿る人生の真実を描く傑作小説。
「BOOK」データベースより


「エスケイプ」
主人公の軽妙でどこか投げ遣りな語り口調が特徴的です。

自分自身を見つめ直し、信じてきたものを捨てて、抜け出すことを決意した40歳の正臣。
妹が始める託児所の仕事を手伝うことを決めたが、仕事を始めるまでに1週間の猶予があった。
思いつきで大阪行きの寝台列車に乗り、唐突に「あいつ」がかつて住んでいた京都に降り立つ。
「卒業旅行」と称して過ごす、エスケイプ(逃避)の物語です。
変わり者でだらしなく、いい加減だけど、どこか可愛げがあって憎めない主人公です。

成り行きで、神父バンジャマン宅に居候させてもらうことになった正臣。
この神父がいろいろと訳ありで、とてもいい味をだしています。
隣の家に住む歌子ばあさんもよくて、おじいさんの話をするところはジンときました。

正臣が神に向けて言った言葉はおもしろいけれど、切実です。
「おれさあ、ここで悔い改めちゃったりすると人生ゼロになっちゃうみたいで、それはちょっと都合が悪いんだよな」
「神さまよ、人の罪なんか聞くより、むしろ応援しろよ。あんたの作った人類のこととかをよ。」
「悪いな、おれは必死だよ。でも必死って祈ることに少しは似てないか。」

主人公の生き方やそれまでの行動には私の想像が及びませんが、今まで信じてきたことや価値観が急に色あせて見えるということは私にも有り得るわけで、それを考えるとドキッとします。
だからといって、20年という歳月を費やしたものから、すぐに別の道へ方向転換できるものでもない。
私も心の整理をつけるために、ひとまず逃避したくなるだろうし、何かに縋りたくなるだろうなと思います。

ラストは少しせつなくて、でもどこか清々しくてよかったです。

「アブセント」
「エスケイプ」での「あいつ」が主人公の話。
のらりくらりした感じの語り口調です。

透明人間ごっこをするのが好きだった子供のころ。
誰も知らない土地へやってきて、自由と開放感を感じていた15年前。
そして今は、「このまま帰らなかったら、どーなんだろーなー」なんて、自分の存在が「透明人間」になることを想像している。
そして、自分の隣にかたわれの「不在」という存在を強く意識してしまっている。
「アブセント」(不在、欠けている)は捉えどころのない空虚さをあらわしているようで、いろいろ解釈できそうです。
分かったような分からなかったような(笑)

こちらも、ラストの「エスケイプ」との時を越えた呼応には思わずうなってしまいました。
絲山秋子 | Comments(2) | Trackback(0)
2007/10/22

「株式会社ハピネス計画」 平山瑞穂

株式会社ハピネス計画株式会社ハピネス計画
(2007/07/31)
平山 瑞穂

商品詳細を見る

★★★☆☆

思い込みとは怖いもので、平山瑞穂さんを女性だとずっと勘違いしていました。
(瑞穂という名前の女性の知人がいるのです。)
でもそれにしては、男性的な文章を書く人だなと、今回強く思って調べてみたら、なんだ、男性じゃないですか(笑)
納得です。
あまり得意でない文体なのですが、話が進むにつれ面白く感じてきて一気に読みました。

平山さんの本は、以前に「忘れないと誓ったぼくがいた」を読んで以来です。
かなり趣きが違うので、同じ人が書いたのかと少し驚きました。
現実と回想・妄想が織り込んである書き方が、私には若干読みにくく感じましたが(でもそれがこの話のミソなんですが)、個性的なキャラが飽きさせないので、今作のほうが面白かったです。

婚約者に捨てられ、会社もクビになって、不幸のどん底に落ちた氏家譲(うじいえゆずる)。故郷に舞い戻った彼は、中学時代の同級生・阿久津武蔵(あくつむさし)に再会する。ロック・スターになったという武蔵から、強制的に彼の愛人・諸井優璃亜(もろいゆりあ)の相手をするよう命じられた譲は、優璃亜とその娘・樹雲(じゅうん)が住む家で家政夫のような仕事をするハメになる。さらに、武蔵が経営する怪しげな会社「株式会社ハピネス計画」で働くことになった譲は、ある日、中学時代の同級生だった謎めいた女性・藤原たまりとすれ違う。彼女と遭遇したことによって、譲の心の中に封じ込められていた色々な思いが蘇り始めて――。「本当の幸せ」って何? 今、最注目の作家が贈るノンストップ・エンタテインメント!
小学館HPより


なんだか不思議なお話でした。
題名となっている会社の話と、たまりって何者?という話とが交差しているので、どこに向かって進んでいくのか、途中で軽く混乱します。
表紙の女の子は、中学生時代のたまり、ということでいいんでしょうか?
もしそうなら、題名が社名、表紙がたまり、の2本柱ということで、個人的にすっきりします(笑)

この話を譲の成長譚としてみるなら、彼が後に働くことになる株式会社ハピネス計画箒木営業所長、倉田の存在は大きいです。
クレーム客に対する辛口な意見のくだりは、身につまされます。
ハウツー本を読んで何かが変わったような気になって満足し、それでいて特に実行動にあまり反映していない自分のことを言われているようで(笑)

ラストは前向きで、読後感も悪くありませんでした。
は行その他 | Comments(2) | Trackback(0)
2007/10/19

「しずく」 西加奈子

しずくしずく
(2007/04/20)
西 加奈子

商品詳細を見る

★★★★☆

いい本を読めました。
6つの短編から成り、どの話もよかったです。
とくに「影」でドキリとし、「シャワーキャップ」で涙が出ました。
シンプルで飾らない文とまっすぐな言葉は、西さんの人柄があらわれているのでしょうか。

以下、少しネタバレありです。
>>続きを読む
西加奈子 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/17

「あなたがここにいて欲しい」 中村航

あなたがここにいて欲しいあなたがここにいて欲しい
(2007/09)
中村 航

商品詳細を見る

★★★★☆

中村さんの本は初めて読みました。
独特の世界観がありますね!

読み終えてからネット検索していると、中村さんご本人の公式HPとブログを見つけました。
城址公園のゾウのウメ子さんの画像が載っていて、先月還暦を迎えたと書いてあり、嬉しくなりました。

「あなたがここにいて欲しい」
実は、出だしでハズレかなと思ったんです。
茫洋としていてつかみどころがないというか。
けれど、又野くんの話のあたりからこの文章の味がなんとなくつかめてきて、サザナミの話で吹き出し、だんだんツボにはまって、あとはとても楽しく読めました。
淡々と静かな中に、こみあげてくる面白さのある文がいいです。
幸せを分けてもらったかのような温かな読後感でした。
どうやらこのお話は既刊本と関連しているようなので、他も読んでみたいと思います。

「男子五編」
HPのプロフィールから察するに、自叙伝的なお話でしょうか。
(カムカムナウというバンドを結成、と書いてありましたし。)
どれもその時代のリアリティが感じられてよかったですが、「小編」の閉塞した世界の描かれ方が特に好きです。
「世界三大美徳」って面白いですね(笑)

「ハミングライフ」
この話を外で読まなくてよかったです。
だって、ウロレターのやりとりを、ずっとにやけて読んでいましたから(笑)
冷静に読むことはできません。
そしてイラストのかわいいこと!
あまり深く考えずに読むと、この柔らかくほんわかした空気感に浸ることができて幸せです。
な行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/15

「Rのつく月には気をつけよう」 石持浅海

Rのつく月には気をつけようRのつく月には気をつけよう
(2007/09)
石持 浅海

商品詳細を見る

★★★☆☆

石持さんの本は初めて読みました。

大学時代からの飲み仲間である、夏美、長江、熊井の男女三人は、しょっちゅう飲み会を開催し、いつも三人だと芸がないので、誰かが一人ゲストを連れてくるのが習わしとなっている。
おいしいお酒と肴、それにゲストとの会話を交えて、楽しい時間を過ごそうというのです。
ゲストの話は、時に甘かったり、時にほろ苦かったりするスパイス、といったところでしょうか。

毎回、何気なく発せられたゲストの言葉に、頭脳明晰の長江が反応し、いつの間にか日常ミステリーの様相を帯びてきます。
ああでもないこうでもないと、夏美や熊井が推論や意見を出し合うなか、最後は長江が謎解きをして解決するという一連のパターンの連作短編集となっています。

つまり、謎解きはすべて、飲み会の席での四人の会話の中で完結するんです。
長江は『悪魔的な頭脳を持っ』ていて、一を聞いて十を知る、を地でいく人というのでしょうか。
私のような凡人には計り知れない推理を展開してくれるので、それって深読みや憶測じゃないのか、飛躍しすぎてないかと、狐につままれたような腑に落ちない面もありました。

でも、それを差し引いても、お酒や食べ物はとてもおいしそうだし、夏美と熊井のやりとりは笑えるところもあって面白かったです。
書き出しが一話ごとのラストにうまくつながっているし、まとまりもあってよかったです。

以下、微妙にネタバレあります。
>>続きを読む
あ行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/14

「ティッシュペーパー・ボーイ」 有吉玉青

ティッシュペーパー・ボーイティッシュペーパー・ボーイ
(2007/02/21)
有吉 玉青

商品詳細を見る

★★★☆☆

渋谷の雑踏に出没、百発百中でティッシュを受けとらせてしまう、赤帽白つなぎのティッシュペーパー・ボーイ。腐れ縁の恋人と別れたいOL、出会い系サイトで知り合った孤独な女子中学生と窓際中年、年下のイケメンの恋人に本気になってしまったバツ一女性……きまじめな人々と彼の行きずりがよぶ、不思議で心温まる5つの偶然の物語。
新潮社HPより


読むと、登場人物と一緒に背中を押されて一歩前に進めるような、少し元気になれる連作短編集です。
こんな些細なことでも、何かが変わるきっかけになることもあるのかもしれないな、と思わされます。
でも実際には、この転機がティッシュペーパー・ボーイに関わったことによるものだなんて、思わないかもしれないですけどね。
もっと言えば、ティッシュペーパー・ボーイを軸にしなくても、それぞれ独立したお話にできたと思うのです。
でも繋がっていることで、どこか不思議な物語になっているこの幻想的な感じも、わりと好きだったりします。
脇役のように描かれていて、その実大きな存在感を持っている、この影の主役。
街中でティッシュを配る人に特別意識を払ったことはなかったけれど、そんな偶然というか奇跡が自分にも起こるだろうかと、これから気になりそうです(笑)



>>続きを読む
あ行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/10

「FINE DAYS」 本多孝好

Fine days―恋愛小説Fine days―恋愛小説
(2003/03)
本多 孝好

商品詳細を見る

★★☆☆☆

評判がいいようなので読んでみました。
期待値が上がっていたので、辛口な感想になってしまいました。

下記の内容説明だけを見て、恋愛小説なんだと思って読み始めたので、まず面食らいました(笑)

僕は今の君が大好きだよ。たとえ、君自身が、やがて今の君を必要としなくなっても-。表題作のほか「イエスタデイズ」「眠りのための暖かな場所」「シェード」の全4作のラブ・ストーリーを収録。
「MARC」データベースより


どちらかといえばミステリー風、ほんの少しホラー調のような不思議なお話です。
程度は違いますが、どの話も背筋がぞわぞわっと薄ら寒く感じるような空気感があります。
最初から最後まで不思議というのではなく、現実的なところもあり、その境界を行ったりきたりしているかのようです。

正直に言うと感情移入は難しいし、心に響いてこなかったので、こういう雰囲気を楽しむ本なのかもしれません。
文章は落ち着いた印象で、とても読みやすいです。
4つのお話とも「絵」が出てくるので、ある意味、キーになっているのかなと思いました。

「FINE DAYS」
思ってもいない方向に話が進んでいったので、途中で、え~!?と驚かされました。
そして最後、あ、そういうオチね(笑)という感じで終わりました。
語り手の飼っているダックスフントがいい味を出しています。

「イエスタデイズ」
ありがちな感じのお話ですが、少し切なく、爽やかで、読後感はよかったです。

「眠りのための暖かな場所」
題名から連想するイメージに反して、不気味さが漂っています。
「本当だな。まったく」
「もう行けよ」
「出るぞ」
終始こういう口調の女性は、私の周りにいません。
なので、そこに逐一引っかかり、違和感を感じてしっくりきませんでした。
でも、彼女と教授とのやりとりは少しおもしろいです。

「シェード」
話の雰囲気はこれが一番好きでした。
話の筋は早い段階で読めてしまいましたが、老女の語る話と、聞いている「僕」の回想が重なっていくところは、引き込まれます。

は行その他 | Comments(0) | Trackback(1)
2007/10/07

「ふじこさん」 大島真寿美

ふじこさんふじこさん
(2007/06/21)
大島 真寿美

商品詳細を見る

★★★☆☆

「ふじこさん」「夕暮れカメラ」「春の手品師」の3編収録。
どれも女の子が主人公で、家族の話が出てき、人との出会いがキーとなっています。
書かれた時期に開きがあるのですが、大島さんの書きたいことは今もずっとつながっているんだなと思いました。

「ふじこさん」
離婚調停中の母の実家での生活、気の休まらない学校や塾。
居心地のいい場所などどこにもなくて、息苦しく希望の持てない毎日を送っている小学校高学年のリサ。
そんなリサが、ふと父のマンションを訪れると、そこには見知らぬ女性、ふじこさんがいた。
ふじこさんとの出会いはリサの鬱屈した心を少しずつ変えていく。
読後感のいい話でした。

本の紹介文で、ふじこさんは「これまでにみたことのない、へんな大人」と書かれていてどんな変わり者なんだろうと思いましたが、そこまで変な人ではないです。
本文にもあるとおり、子供は「生まれてから関わってきた人たちがすべてだと思いこんでいる感性」を持つからこそ、今までに出会わなかったタイプのふじこさんの存在は、リサにとって衝撃だったんですね。
リサを子供扱いしない、素直で素敵な女性として描かれています。

他にもその年齢特有の、大人の事情を感じ取ったり気付いたりできるけれど、気付かない子供のふりをせざるを得ない状況が多々あって、そういうところが細やかに描かれていて、さすがだなと思いました。
このお話のみだと★4つです。

「夕暮れカメラ」
なんといってもおぱあさんが魅力的です。
主人公の女の子とは普通に会話ができるのに、藤岡家に帰ると呆けたようにふるまう。
これって、目的は違うけど、「ふじこさん」のリサの子供のふりにも少し重なるのです。
身近なはずの家族は気付かないでいるところも(笑)

「春の手品師」
大島さんのデビュー作だそうです。
少しこのお話は不思議めいた印象が強かったけど、主人公の家族の話の告白は、丁寧に描かれていました。
表面上は平和で、その実、緊張状態を保った微妙なバランスというのは、「夕暮れカメラ」の藤岡家にも通ずるものがあります。
「子供というのは経験不足を補うためにどこか別の感覚が開いている。」というフレーズが大島さんらしい表現だなと思いました。
あ行その他 | Comments(0) | Trackback(1)
2007/10/07

「図書準備室」 田中慎弥

図書準備室図書準備室
(2007/01/30)
田中 慎弥

商品詳細を見る

★☆☆☆☆

「図書準備室」「冷たい水の羊」の2編収録。

この本を好きな方は不快に思われるかもしれないので、スルーしてください。
>>続きを読む
た行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「さようなら、コタツ」 中島京子

さようなら、コタツさようなら、コタツ
(2005/05/19)
中島 京子

商品詳細を見る

★★★☆☆

まえがきにもあるように、この短編集はそれぞれの「へやのなか」をテーマにしています。
住む人が違えば、たとえ同じ間取りであっても二つとして同じ部屋はない、という捉え方は改めてそうだなと思わされます。
このまえがきがすごく好きです。

「ハッピー・アニバーサリー」
「さようなら、コタツ」
「インタビュー」
「陶器の靴の片割れ」
「ダイエットクイーン」
「八十畳」
「私は彼らのやさしい声をきく」
の7編を収録。

このなかで特によかったものについて。

「さようなら、コタツ」
展開は分かりやすいものだけど、人物に魅力があって、引き込まれました。
久々に恋愛をしている由紀子、恋愛上手で既婚の妹、由紀子の彼で礼儀正しい山田伸夫。
由紀子が三十六回目の誕生日を迎えた日の物語です。
由紀子のはりきり具合が少し滑稽で、でも気持ちがよく分かります。
山田伸夫の礼儀正しさもなんだか微笑ましいです。

「ダイエットクイーン」
取り壊し前のアパートに住んでいる人たちの話。
小学生のマナちゃんが雑誌に載っているダイエット商品の広告記事を読んで、ある切実な思いから太ってもいないのに将来ダイエットクイーンになる、と言いだし・・・。
ラストは、今後の展開を想像してしまって胸が痛くなりました。

「八十畳」
今何かと話題の相撲部屋の話。
最年少の弟子希望者が逃げ出した晩、残された力士たちが八十畳という広い部屋で思い思いに過ごす一夜。
少しせつなく、でも前向きになれるお話です。

「私は彼らのやさしい声をきく」は「桐畑家の縁談」という本とつながっているようなので、こちらも読んでみたいと思います。
中島京子 | Comments(2) | Trackback(1)
2007/10/07

「めぐらし屋」 堀江敏幸

めぐらし屋めぐらし屋
(2007/04)
堀江 敏幸

商品詳細を見る

★★★☆☆

こんなに静謐で淡々とした作品は久々に読んだかもしれません。
読み始めはとらえどころがなく、あまりに静かで何度か睡魔に襲われましたが、これは私の体調のせいということにしておきます(笑)

蕗子さんは会社勤めを20年近く続け、穏やかに暮らしている女性です。
蕗子さんが父のアパートで「めぐらし屋」と題された大学ノートを見つけるところから物語は始まります。
はじめは何のことだか分からず読み進めていくと、どうやらお父さんが急死し、一人住まいのアパートを引き払うために訪れたとのこと。
そのアパートに突然電話がかかり、
「……めぐらし屋さん、ですか?」と言われるのです。

はじめて聞く「めぐらし屋」という言葉にとまどいながら、生前の父についてノートと電話を手がかりにたどっていこうとするのです。
人との出会いや会話を通して、今まで知らずにいた父の姿を思い浮かべ、忘れていた自分の記憶をたぐりよせていくところが丹念に描かれています。

堀江さんの視点や表現には、はっとさせられるところがいくつもありました。
花屋の雨天の割引に対して、
「そうやって一部を安くすると、売り物すべての価値が下がるような気がしてならないのだった。」

長く一人暮らしをつづけていることに
「日を送ることにひそむ際限のない反復の魔を意識するようになってもいた。」

父のことを人から聞いたときに
「ヒントは、それを与える側の感性と受け取る側の感性のバランスによって、残酷に変化する。」

言葉の選択がすごくよくて、他にもユーモラスで独特な表現や比喩がたくさんあり、言葉遊びのように綴られているキーワードも箇所箇所で生きていて面白いです。
は行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「シンデレラ・ティース」 坂木司

シンデレラ・ティースシンデレラ・ティース
(2006/09/21)
坂木 司

商品詳細を見る

★★★★☆

このお話、やさしい空気に包まれています。
ひょんなことから大学の夏休みに、叔父の勤める歯科でアルバイトをすることになってしまった咲子。
実は小さいころ、恐い思いをしたトラウマから、歯医者が大の苦手なのです。
クリニックのスタッフや、患者さんとのやり取りを通じて、少しずつ変わっていく咲子のひと夏を、温かく軽やかに描いています。

咲子の仕事は受付。
院長から、治療に役立てるために患者さんの食べ物の嗜好などの生活習慣を聞きだして「第二のカルテ」を作るように言われます。
患者さんの抱える歯にまつわる問題や心の悩みを、クリニックの面々と解決していくのですが、少し謎解き風になっていておもしろいです。
そこに人付き合いの下手な歯科技工士、四谷のことが少しずつ気になり始めた咲子の心の動きが絡みながら進行していく、連作短編集となっています。

クリニックのスタッフが個性的で魅力があり、とても温かく居心地のいい空間です。
みんな仕事に対して真摯で、プロ意識が高く、患者さんへの配慮が行き届いているんです。
クリニックも、パウダールームがあったり、荷物を受付で預かったり、患者をお客様と呼んだりと、まるでスポーツクラブやエステのよう。
ああ、こんな歯医者なら行ってみたい(笑)

四谷以外のスタッフの出番がもっとほしいと思ったのは、それだけ魅力的なキャラクターがそろっているからですね。
成瀬先生のナンパの注意点三カ条には思わず笑ってしまいました。

実は坂木さんのお話を読むのは2作目なのですが、最初に読んだのがどうも自分にあわなくて、それ以来苦手意識がありました。
先日、図書館で何気なく手に取ったこの本。
あ、坂木さんか~と思いつつ書き出しだけ見てみようと思ったら、なんか読みやすそう!
とりあえず借りてみることにしたんですが、正解でした。
おだやかで優しい気持ちになれる本でした。

他の作品も読んでみたくなりました!
坂木司 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「螺鈿迷宮」 海堂尊

螺鈿迷宮螺鈿迷宮
(2006/11/30)
海堂 尊

商品詳細を見る

★★★☆☆

以前「チーム・バチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」を読んだので、続いてこちらを読みました。
「バチスタ」は面白かったけれど、「ナイチンゲール」は正直いまひとつだったので(歌の作用効果うんぬんがなんとも・・・)、どうかなと思いつつ読みました。

医療界を震撼させたバチスタ・スキャンダルから1年半。東城大学の医学生・天馬は、留年を繰り返し医学の道をリタイア寸前だった。ある日、幼なじみの記者・葉子から「碧翠院桜宮病院に潜入できないか」と依頼を受ける。桜宮病院は、老人介護センター、ホスピス施設と寺院を一体化した複合型病院で、終末期医療の先端施設として注目を集めていた。しかし、その経営には黒い噂が絶えないという。天馬は看護ボランティアとして桜宮病院に通い始めるが、ある時から疑念を感じる。「この病院、あまりにも人が死にすぎる」と…。『このミス』大賞受賞『チーム・バチスタの栄光』の新鋭が贈る最新メディカル・エンターテインメント。白鳥の最強の部下“氷姫”、ついに登場。
「BOOK」データベースより


氷姫があんな人だとは驚きました!
登場人物の舌戦は相変わらず面白いです。
今回は白鳥が苦戦するのも見物でした。
が、やられすぎて物足りない感もあります。
ロジカルモンスターぶりがあまり見られなかったのは、それだけ巌雄先生が強敵だったということですか~。

落ちこぼれ医学生、天馬大吉(すごい名前!)が主役の今回。
医療の話も、彼に説明するスタンスで噛み砕いてかかれているのでとても分かりやすいです。
これはバチスタのときも思いました。(専門外の田口先生に外科手術について説明している体裁です。)

終末期医療や地域医療、死亡時医学検索についての現状と問題提起は、素人なりに考えさせられ、身近な問題としても改めて気付かされた部分でした。

「闇に光を当てれば、隣に別の闇ができるだけ。光には闇が寄りそう。これは普遍の真実。光が強ければ闇も深い。これまた永遠の真理」
という巌雄先生の一言は、使い古されている言葉かもしれないけれど、今後の白鳥にずっしりと伸し掛かっていくんでしょうね。

含みを持たせた終わり方なので、次作「ジェネラル・ルージュの凱旋」を早く読みたいです!
今後の白鳥&田口コンビの活躍が楽しみです。
もっと田口先生をだしてほしい・・(笑)

あと、桜宮一族の長男ってこの先どこかで登場するんでしょうか?

「チーム・バチスタの栄光」が映画化されますね。
田口先生役が女性っていうのには驚かされました(笑)
か行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「大きな熊が来る前に、おやすみ。」 島本理生

大きな熊が来る前に、おやすみ。大きな熊が来る前に、おやすみ。
(2007/03)
島本 理生

商品詳細を見る

★★☆☆☆

好き嫌いが分かれる作品だと思います。

傍からみれば何の問題もなさそうにみえるカップル、徹平と珠美。
でも、二人はそれぞれに心の闇を抱えていて、珠美は徹平のなかに冷徹な父の姿を重ね、徹平は珠美を見ているとふたをしていた過去を思い出してしまう。

「俺、二度と殴ったりしないから。本当に、もうしないから。約束する」
・・・共依存ですね。
残念ながら理解や共感はできませんでした。

表題作ほか、「クロコダイルの午睡」、「猫と君のとなり」の2編収録。

3つの話には、それぞれ形のちがう暴力が出てきます。
身体への直接的な暴力だったり、無神経な行動や言葉という暴力だったり、本人へ向けられないもっと弱いものへの暴力だったり。

大人しくて目立たない3人の主人公の女の子たちが、それぞれひたむきに恋や自分自身の傷に向き合う姿は、とても痛々しくて、苦い気持ちになります。
それだけ真剣で、それだけ一生懸命なんだなって。

「猫と君のとなり」は少しほっとできるラストだったので、救われました。
でも、「クロコダイルの午睡」が一番印象に残る話でした。
さ行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「美晴さんランナウェイ」 山本幸久

美晴さんランナウェイ美晴さんランナウェイ
(2007/04)
山本 幸久

商品詳細を見る

★★☆☆☆

世宇子の叔母、美晴さんは27歳。いい加減で適当、いつもふらふらと奔放に生きている。
母親の葬儀をすっぽかしたり、お見合いを途中で抜け出したり。

そんな困った美晴さんを中心に、思春期の世宇子の視点から描いた家族の物語です。
逃げてばかりの美晴さんにまわりはいつも振り回され、でも帰ってくるとみんな呆れながらもほっとする。
美晴さんを取り囲む人たちが真面目で温かくて、彼女にちょっと甘いので、少し歯がゆくなります(笑)

美晴さんは実際に自分の親戚だったらいい迷惑ですが、どこか憎めないところもあって、不思議な人です。
誰でも悲しいことや嫌なことから逃げたいと思う気持ちは持っていて、それを正直に行動にあらわす真っ直ぐな美晴さんを、ほんの少しだけうらやましいと感じるからでしょうか。

次々と起こる家族の出来事や事件はけっこう深刻ですが、大人目線でなく世宇子の視点から描かれていることとで、一歩ひいて読めます。

逃げ続けていた美晴さんが、最後に追いかけてつかまえたもの。
なんだかとんとん拍子にうまく事が運んでしまった感じはしましたが、ああいうラストだからこそ、読後感が温かく感じられるのでよかったのかな?

山本さんのこれまで読んだ本がとても好きなので、少し評価をきびしめにしました。
や行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「頭のうちどころが悪かった熊の話」 安東みきえ

頭のうちどころが悪かった熊の話頭のうちどころが悪かった熊の話
(2007/04/02)
安東 みきえ

商品詳細を見る

★★★★★

再読。やっぱり何度読んでもいいな~と思いました!
この本、図書館では児童書の棚に置いてあったんですが、大人が読んでおもしろいと思える話なんじゃないかなと思います。
(きっと子供も。)
そして下和田サチヨさんの挿絵がすごくピッタリきます。

もし人生の意味に悩んだらとりあえず食べてみてください。7つの動物ショートストーリー。「小さな童話大賞」(毎日新聞社主催)受賞作『いただきます』収録。

「頭のうちどころが悪かった熊の話」
「いただきます」
「ヘビの恩返し」
「ないものねだりのカラス」
「池の中の王様」
「りっぱな牡鹿」
「お客さまはお月さま」

の7つの短編から成ります。

今回読んだときは、「池の中の王様」と「りっぱな牡鹿」が特に心に響きました。
前回は「いただきます」が一番好きだったので、読むときによって感じる部分が違うのかもしれません。

読んでいると自然と肩の力が抜けて、出てくる動物たちに何かを気付かされる。
でも真面目な説法じゃなくて、くすっと笑ってしまったり、結末に思わずにやっとしてしまったり。
こんな寓話、大好きです。
あ行その他 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「塩の街」 有川浩

塩の街塩の街
(2007/06)
有川 浩

商品詳細を見る

★★★☆☆

図書館で予約している「図書館戦争」シリーズがなかなか回ってこないので、こちらから先に読んでみました。
こちらは、有川さんデビュー作+番外編 となっていました。

東京湾に巨大な白い隕石らしき物体が落下する。
それと時を同じくして、人が塩と化し、まるで塩の彫刻のようになっていく現象が起こる。
この塩化という奇病は、原因・感染経路・治療方法不明で、一度塩化がはじまったら塩と成り果てるまでとどまることがなく、さらにその被害は拡大していっている、という奇抜な設定です。

そんな機能も倫理も崩壊した街、東京で細々と暮らしている女子高生の真奈と、年が10近く離れた「保護者」秋庭、この二人に関わる人達の物語。
現実離れしていますが、妙にリアリティがあるので、すんなり話に入っていけました。

特にキャラが確立していて人物の心理描写が丁寧なので、感情移入がしやすいです。
今読んでも面白いけれど、高校生くらいのときに読めば、もっともっとどっぷり漬かることができたんじゃないかと思います。

『世界が終わる瞬間まで、人々は恋をしていた。
 その中の一つの恋が世界を救った。
 そのことを僕はこれから書こうと思う。』

切なくてとても素敵な、甘い甘い恋物語でした。
映像で見てみたい気がします。

話の中にでてくる歌「グリーングリーン」は学校の授業で習ったけれど、7番まであるなんて知りませんでした。

生と死、喪失と再生。
それに向き合うこと。知ること。伝えること。
大きなテーマが込められた深い歌詞だったんですね。
有川浩 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「むかしのはなし」 三浦しをん

むかしのはなしむかしのはなし
(2005/02/25)
三浦 しをん

商品詳細を見る

★★★☆☆

日本の昔話をモチーフにしをんさん独特の世界観で描かれた現代版昔話、といった様相です。
7つの短編で構成されていますが、読み進めるうちにそれぞれがある主軸でつながっていくことがわかってきます。

三カ月後に地球は大きな隕石と衝突し、滅亡するかもしれない。木星に脱出するロケットには、一千万人しか乗れず、搭乗者は抽選できまるという。
そのとき人は何を思い、どうするか。何を語り何を伝えるのか。

あとがきまで読み終えて、一話目を読み返すと、面白みに欠けると思っていたこの起点が生きてきます。

読みやすいので表面上だけをさらうと読みとばしてしまうけれど、そこには計算された精巧な構成と話の深さがあり、巧いなあと思いました。
まるで自分が遠い先からこの昔話をよんでいるような現実離れした淡白な空気感も「むかしばなし」ならでは。

「風が強く吹いている」や「まほろ駅前多田便利軒」のように胸熱くなる話ではないけれど、これはこれでとてもよかったです。

「ラブレス」・・・かぐや姫 
「ロケットの思い出」・・・花咲か爺
「ディスタンス」・・・天女の羽衣
「入り江は緑」・・・浦島太郎
「たどりつくまで」・・・鉢かつぎ
「花」・・・猿婿入り
「懐かしき川べりの町の物語せよ」・・・桃太郎

短編の中でも「たどりつくまで」と「懐かしき川べりの町の物語せよ」が特に好きです。
三浦しをん | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「薄闇シルエット」 角田光代

薄闇シルエット薄闇シルエット
(2006/12)
角田 光代

商品詳細を見る


★★★★☆

角田さんのお話は好きで、図書館にあるとよく借りてきます。
そのなかでも、この本にはかなり涙腺をやられてしまいました。
きっと、ハナが抱える恋人や結婚や家族や友達や仕事のあれこれが、自分にも重なる部分があって、シンクロしてしまうからなんでしょう。
私が目をそらし考えないよう、想像しないようにしていたことが、如実に描かれていて心にぐさぐさと刺さりました。

ハナは下北沢で古着屋を経営している37歳。仕事は順調。同年代の男よりも稼いでるし、自分の人生にそれなりに満足していた。ある日、恋人から「結婚してやる」と言われ、小さな違和感を感じる。「どうして、この人は『私が結婚を喜んでいる』と思って疑わないんだろう…」―違和感は日に日に大きくなり、ハナは恋愛と仕事について模索していくことになるのだが…。人生の勝ち負けなんて、誰が分かるというのだろうか。圧倒的リアルと共感が心にささる傑作長編。
「BOOK」データベースより


「私は何をすることで、自分だけの城を作れるんだろう? 母のような城はいやだ、チサトのような城もいやだ、タケダくんの城にも住みたくない、いやだとやりたくないばかりくりかえして、私はその先に進めるんだろうか?」
「結婚に思うところがあるわけではない、私はただ、変わってしまう、ということがこわかっただけなのだ。金太郎飴の外気に触れない真ん中に居続けたかった。」
「『みんなひとつずつ手に入れて、一歩ずつ先に歩いてるのに、私だけいつまでも手ぶらで、じたばたしてるだけなんだよ』」

そこから動きたくない、と思っているうちに周りはどんどん進んで自分だけ取り残されてく焦燥感や、何かを失っていく喪失感は身につまされました。

また、手作り狂の母親のエピソードも自分の母と重なります。
小さいころは料理、お菓子、洋服、バッグ、なんでも手作りでした。
小学生のころ、親戚の家ではじめてマックのハンバーガーを食べたときは、軽いカルチャーショックでした(笑)
思春期にはハナのようにそういうものを疎ましく感じた自分がいました。
(今では尊敬していますけど)
ハナの妹の専業主婦のナエが、なんでもできる母のようにはできない自分に自己嫌悪を感じヒステリーをおこすシーンも、なんだかうなずけるのです。

「その人はその人になってくしかない」というチサトの一言。
ハナが百円ショップのマグカップを買い、歩き出すラスト。
これからも起こるだろういろいろな出来事に、つまずき、振り返り、寄り道しながらもゆっくりと進んでいこうとする姿に光が見えました。
角田光代 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/07

「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦

夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
(2006/11/29)
森見 登美彦

商品詳細を見る

★★★☆☆

森見さんの小説は初めて読みました。
この本、2007年本屋大賞第2位だそうです。
文体が独特で、お話自体もとにかく不思議です。
文に慣れるのと、物語に入っていくのに少し時間がかかりました。
でも、最後まで読んでよかった!

私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。
「BOOK」データベースより


一目惚れした「彼女」(クラブの後輩)の外堀を埋めるべく「彼女」を追いかける「私」の様子は、ついつい応援したくなります。
この「彼女」、筋金入りの不思議キャラです。
二足歩行ロボットのステップを踏んでみたり、「おともだちパンチ」をくりだしてみたり、緋鯉を背負って達磨の首飾りをつけてみたり!

二人以外の登場人物もこれまた特徴のある人たちばかりです。
夜道を行く男を襲って下着を奪う李白さん、天狗の樋口さん、パンツ総番長って(笑)

風邪薬を呑んでも治らない風邪を、たちどころに治す薬「ジュンパイロ」、私もほしいです。

路傍の石ころだった「私」の一年間を通しての様々な努力と、「神様の御都合主義」の結果の大団円、堪能できました♪
ほほえましい結末に思わずにっこりしちゃいます。

森見さんの他の作品も読んでみたいなと思います。
森見登美彦
2007/10/07

はじめに

★★★★★ この本に出会えてよかった!(手元に置きたいほど好きな本)
★★★★ おもしろかった、また読みたい!(再読したい本) 
★★★☆ おもしろかった!
★★☆☆ まあまあかなぁ
★☆☆☆ 私の好みには合わなかった

上記のとおり5段階評価をしています。
読んだ時の状況や心境によって、捉え方や感じ方が変わるので、普遍的なものではありません。
私の備忘録の指標として、極めて個人的な感覚に基づいた便宜上のものです。
迷ったら★3にしています。
はじめに・★評価について | Comments(0) | Trackback(0)
 | HOME | 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。