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2012/06/01

「眺望絶佳」 中島京子

眺望絶佳眺望絶佳
(2012/02/01)
中島 京子

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★★★☆

昭和33年、東京タワーが立ったあの頃から遠くここまで来てしまった。それでもわたしたちは立っていなければならない。スカイツリーのように。もの悲しくも優雅な、東京タワーとスカイツリーの往復書簡。2011年の静謐と小さな奇跡を切りとった、「東京」短篇集。
「BOOK」データベースより



偶然手に取ったのが、タイミング良くスカイツリー開業前の時期でした。
スカイツリーの往信と東京タワーの復信にはさまれる形で、東京で暮らす人たちの8つのエピソードが綴られています。
良くも悪くも、今という時代をありありと感じる物語。
不思議な余韻に浸ったり、心をざわつかせたりしながら一編一編を味わいました。

あなたとわたしは、立っていなければなりません。


人々の営み、街の移り変わり、自然災害、そしてあの大地震。
いろんなものを見てきた東京タワーが、後輩のスカイツリーに贈った言葉です。

物珍しく楽しい反面、見たくないものも数多くある、はるか下の世界。
何もできずにただ立っていることしかできないけれど、変わらずにそこに在り続けることで、見上げる人々が安心し、「明日を生きる活力を身に蘇らせることができる」のだと。
正直、東京に住んでいるわけではないので実感の湧かないものでしたが、よくよく見慣れたものを心の拠り所としている人は案外多いのかもしれません。

2つの塔は、この先どんなものを見ていくことになるのか、そんなことを思いながら、本を閉じました。
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中島京子 | Comments(0) | Trackback(0)
2011/10/25

「小さいおうち」 中島京子

小さいおうち小さいおうち
(2010/05)
中島 京子

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★★★★

赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々を振り返るタキ。そして60年以上の時を超えて、語られなかった想いは現代によみがえる。
「BOOK」データベースより



少し前に「エルニーニョ」を読んでから、気になり始めた中島京子さん。
本作は直木賞受賞作ということで、なかなか予約がまわってこなかったけれど、待った甲斐がありました。

タキの手記を読む形で進んでいく物語は、昭和の初めから始まります。
東北から、女中として働くために上京してきたタキは、美しく年若い時子奥様に仕えることに。
時子奥様は、前夫との間に恭一ぼっちゃんをもうけ、その後平井氏と再婚。
平井の旦那様が建てた「小さいおうち」で、3人の家族とタキが過ごす様が事細かく記されていきます。

読み始めは、少し退屈な物語なのかなと心配したのもつかの間、東京でのモダンな暮らしや、女中の仕事ぶりは物珍しく、だんだん引き込まれていきました。
タキの手記は、時々現代に戻り、タキの又甥にあたる健史が、記述に対し意見を述べている箇所があり、その時代を経験したことのない私のような読者の代弁をしてくれています。

時代は、徐々に戦争へと突き進んでいきますが、平井家やその周辺の人々の生活にじわりじわりと暗い影を落としながらも、身に危険が迫るそのときまで、日々は淡々と営まれる。
むしろ、旦那様は戦争によってもたらされた好景気と会社の発展に喜び、タキは上手にやり繰りをしながら平井家の生活レベルを保とうとし、時子奥様もたおやかに過ごしている様子が伺える。
市井の人、特に社会と関わりの薄い人には戦争がどこか遠くで起こっている他人事のように描かれていて、興味深いです。
それはもちろん、情報が公にされず、行き届いていなかったことが大きな理由になるでしょう。
それだけでなく、混乱のただ中にいた時には、その本流に飲み込まれていることさえ気づかないものなのかもしれません。
きっと、何十年もあとになって振り返ると、あのときはああだった、と知る部分も多いのだと思います。
話は大きく逸れますが、今現在の暮らしぶりは、何十年か先の人たちの目にはどう映っているのだろう、危機感の薄い、ひどくのんびりした様に見えるのだろうか、と思わず重ね合わせて考えずにはいられなくなりました。

最終章は、又甥の健史によって語られます。
そこで知ることになった後日談と、ある事実に、心を大きく揺さぶられました。
これまで読んできたタキの手記を思い返し、語られなかった部分の切なさを思いました。
そして、その時代の持つ暗さを改めて知り、だからこそ「小さいおうち」でのやわらかい光に包まれたように記された温かさが心を打ちました。
読み終えて数日経つ今も、その余韻が残っています。

バージニア・リー・バートンという作家の絵本「ちいさいおうち」と関わりがあるそうですが、残念ながら未読です。
どうやら表紙の絵も、オマージュしている様子。
図書館で探してみたいと思います。
中島京子 | Comments(0) | Trackback(0)
2011/07/17

「エルニーニョ」 中島京子

エルニーニョ (100周年書き下ろし)エルニーニョ (100周年書き下ろし)
(2010/12/10)
中島 京子

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★★★★

女子大生・瑛は、恋人から逃れて、南の町のホテルにたどり着いた。そこで、ホテルの部屋の電話機に残されたメッセージを聞く。「とても簡単なのですぐわかります。市電に乗って湖前で降ります。とてもいいところです。ボート乗り場に十時でいいですか?待ってます」そして、瑛とニノは出会った。ニノもまた、何者かから逃げているらしい。追っ手から追いつめられ、離ればなれになってしまう二人。直木賞受賞第一作。21歳の女子大生・瑛と7歳の少年・ニノ、逃げたくて、会いたい二人の約束の物語。
「BOOK」データベースより



とても面白かったです。
21歳の瑛(テル)は、恋人のニシムラから逃げ、たどりついた南の町のボート乗り場で、7歳のニノと出会う。
そのニノもまた、「灰色」から逃げてきたのだった。

それぞれが抱える事情は、とても重い。
けれど、夏の南国のおおらかさと、そこで出会う人たちの優しさや温かさから、いくぶん軽やかに、そして逃避行物語ならではのテンポのよさで、一気に読めました。

途中途中で折りはさまれる挿話は、物語に深く関わるものもあれば、一見関係のない話のようなものもあって、いくらでも深読みできそうな雰囲気を持っていました。

「歌にはみんな意味があるの。書かれたものはみんなそう。なんにでも、ちゃんと意味があるの。言い換えればね、お嬢さん。歌は、受け取った人のものなの。そこにお嬢さんだけが読めるメッセージを見つけたら、ちゃんと受け取らなくちゃいけないの。逃げるのよ、いい?」


最初のころに出てくる、スーザン・ボイルに似た、ストリートパフォーマーの言葉。
これは、読者に向けられた作者からのメッセージなのかなと思いました。

逃避行には、いつかは終わりが来ると瑛自身も分かっている。
夏休みに、終わりがあるように。
この逃避行のなかで、どんどん「タフ」になり、自立心と行動力を身につけていく瑛。
だけど、まだ幼いニノはどうなってしまうのか。
後半は特にドキドキしながらページをめくりました。

結末。
ちょっとうまく行きすぎかと思うほど、清々しく温かい読後感でした。
夏におすすめの一冊。
中島京子 | Comments(2) | Trackback(1)
2007/10/07

「さようなら、コタツ」 中島京子

さようなら、コタツさようなら、コタツ
(2005/05/19)
中島 京子

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★★★☆☆

まえがきにもあるように、この短編集はそれぞれの「へやのなか」をテーマにしています。
住む人が違えば、たとえ同じ間取りであっても二つとして同じ部屋はない、という捉え方は改めてそうだなと思わされます。
このまえがきがすごく好きです。

「ハッピー・アニバーサリー」
「さようなら、コタツ」
「インタビュー」
「陶器の靴の片割れ」
「ダイエットクイーン」
「八十畳」
「私は彼らのやさしい声をきく」
の7編を収録。

このなかで特によかったものについて。

「さようなら、コタツ」
展開は分かりやすいものだけど、人物に魅力があって、引き込まれました。
久々に恋愛をしている由紀子、恋愛上手で既婚の妹、由紀子の彼で礼儀正しい山田伸夫。
由紀子が三十六回目の誕生日を迎えた日の物語です。
由紀子のはりきり具合が少し滑稽で、でも気持ちがよく分かります。
山田伸夫の礼儀正しさもなんだか微笑ましいです。

「ダイエットクイーン」
取り壊し前のアパートに住んでいる人たちの話。
小学生のマナちゃんが雑誌に載っているダイエット商品の広告記事を読んで、ある切実な思いから太ってもいないのに将来ダイエットクイーンになる、と言いだし・・・。
ラストは、今後の展開を想像してしまって胸が痛くなりました。

「八十畳」
今何かと話題の相撲部屋の話。
最年少の弟子希望者が逃げ出した晩、残された力士たちが八十畳という広い部屋で思い思いに過ごす一夜。
少しせつなく、でも前向きになれるお話です。

「私は彼らのやさしい声をきく」は「桐畑家の縁談」という本とつながっているようなので、こちらも読んでみたいと思います。
中島京子 | Comments(2) | Trackback(1)
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