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2010/09/27

「逃亡くそたわけ」 絲山秋子

逃亡くそたわけ逃亡くそたわけ
(2005/02/26)
絲山 秋子

商品詳細を見る

★★★☆

21歳の夏は一度しか来ない。あたしは逃げ出すことにした。
軽い気持ちの自殺未遂がばれて、入院させられた病院から。
逃げるのに思いつきで顔見知りを誘った。24歳の茶髪で気弱な会社員。
すぐに「帰ろう」と主張する彼を脅してすかして車を出させた。東へ。そして南へ。
__おんぼろ車で九州の田舎町を駆け抜けるふたりの前にひろがった暑い夏の物語。
出版社 / 著者からの内容紹介



いい意味で明け透けで、飾らない文章に、小気味いい会話。
絲山さんの書かれるお話は、やっぱり好きです。

亜麻布二十エレは上衣一着に値する。
亜麻布二十エレは上衣一着に値する。

福岡の病院から、また幻聴から逃れるように逃亡した花ちゃんと、それに巻き込まれたなごやんの2人が、東へ南へと車で逃走する物語。
現在九州に住んでいる私には、舞台となった地名や場所にも馴染みがあり、ことさら身近で面白く感じました。

病気や自殺未遂の過去、病院からの逃亡など、重たい題材を抱えながらも、お話はどこかユーモラスであっけらかんとしています。
花ちゃんの話す博多弁がずけずけと、でものんびりしていて、落ち着いた雰囲気のなごやんとの掛け合いが痛快なのと、九州という土地柄の温かさのようなものがにじんでいるからかな。
もっとも、博多弁に馴染みのない人には、多少読みづらいかもしれませんが。
車の中で聞く、Theピーズの歌詞も要所要所でいいアクセントになっています。

行く先々で、トラブルを起こし、褒められないような行為(無免許運転やら食い逃げやら)をしながら旅は進んでいきます。
これらの悪行は、フィクションだから笑って読めるけれど、いささか度は越えていますね。
でも、そんなことを繰り返しながら、ほんの少しずつ距離が近づいていく二人の関係はどこか微笑ましい。

逃走といっても、ずっとずっと、それこそ一生逃げ続けるわけにはいかない。
いつか終わりは来る。
もちろんそれは花ちゃんにも分かっていること。
では、この逃走はなんだったのか。
人にいっぱい迷惑をかけて、自分たち自身もしんどくて、悪いこともたくさんして、何を、どこを目指していたんだろう。

それでも。
花ちゃんの幻聴、ひょっとしたらもう聞こえなくなるんじゃないかなと思うのです。
生まれ育った名古屋を忌み、東京人として生きようとしていたなごやんにも、物語の最後の一言が表すように心境の変化があったはず。
正しい方法とは言えないかもしれないけど、彼らの過ごした数日は大きな一歩となったのかなと。

これから先の二人の人生が、明るいものでありますように。
爽快感を感じるともに、最後はそんな思いでいっぱいになりました。
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絲山秋子 | Comments(0) | Trackback(0)
2009/02/24

「ラジ&ピース」 絲山秋子

ラジ&ピースラジ&ピース
(2008/07/31)
絲山 秋子

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★★★☆

彼女の心は、何も入っていない冷蔵庫のようにしんと冷えていた―。それでも電波は、必ずラジオを見つけて鳴らす。女性DJの心を描く、絲山秋子の最新小説。
「BOOK」データベースより



絲山さんの本は何冊か読んできたけど、文章が簡潔でさっぱりしていて、男前って言葉が似合うと勝手に思っています。

「世の中には、狂人と変態以外いません」
「よかったじゃん、変な感謝状なんて貰うより焼酎もらって」
ものの感じ方や捉え方は面白いけど、登場人物の考え方や行動に共感したり、感情移入したりすることはあまりないです。
相容れない考え方を読んでも、反発心が生まれたり、不愉快になったりもせず、むしろ、心地よいし、清々しさを感じます。
なんだか不思議です。

続きはネタバレになるかもしれませんのでご注意ください。
>>続きを読む
絲山秋子 | Comments(0) | Trackback(0)
2007/10/24

「エスケイプ/アブセント」 絲山秋子

エスケイプ/アブセントエスケイプ/アブセント
(2006/12)
絲山 秋子

商品詳細を見る

★★★☆☆

闘争と潜伏にあけくれ、20年を棒に振った「おれ」。だが人生は、まだたっぷりと残っている。旅先の京都で始まった、長屋の教会での居候暮らし。あやしげな西洋坊主バンジャマンと、遅れすぎた活動家だった「おれ」。そして不在の「あいつ」。あきらめを、祈りにかえて生きるのだ。―いつわりと挫折の日々にこそ宿る人生の真実を描く傑作小説。
「BOOK」データベースより


「エスケイプ」
主人公の軽妙でどこか投げ遣りな語り口調が特徴的です。

自分自身を見つめ直し、信じてきたものを捨てて、抜け出すことを決意した40歳の正臣。
妹が始める託児所の仕事を手伝うことを決めたが、仕事を始めるまでに1週間の猶予があった。
思いつきで大阪行きの寝台列車に乗り、唐突に「あいつ」がかつて住んでいた京都に降り立つ。
「卒業旅行」と称して過ごす、エスケイプ(逃避)の物語です。
変わり者でだらしなく、いい加減だけど、どこか可愛げがあって憎めない主人公です。

成り行きで、神父バンジャマン宅に居候させてもらうことになった正臣。
この神父がいろいろと訳ありで、とてもいい味をだしています。
隣の家に住む歌子ばあさんもよくて、おじいさんの話をするところはジンときました。

正臣が神に向けて言った言葉はおもしろいけれど、切実です。
「おれさあ、ここで悔い改めちゃったりすると人生ゼロになっちゃうみたいで、それはちょっと都合が悪いんだよな」
「神さまよ、人の罪なんか聞くより、むしろ応援しろよ。あんたの作った人類のこととかをよ。」
「悪いな、おれは必死だよ。でも必死って祈ることに少しは似てないか。」

主人公の生き方やそれまでの行動には私の想像が及びませんが、今まで信じてきたことや価値観が急に色あせて見えるということは私にも有り得るわけで、それを考えるとドキッとします。
だからといって、20年という歳月を費やしたものから、すぐに別の道へ方向転換できるものでもない。
私も心の整理をつけるために、ひとまず逃避したくなるだろうし、何かに縋りたくなるだろうなと思います。

ラストは少しせつなくて、でもどこか清々しくてよかったです。

「アブセント」
「エスケイプ」での「あいつ」が主人公の話。
のらりくらりした感じの語り口調です。

透明人間ごっこをするのが好きだった子供のころ。
誰も知らない土地へやってきて、自由と開放感を感じていた15年前。
そして今は、「このまま帰らなかったら、どーなんだろーなー」なんて、自分の存在が「透明人間」になることを想像している。
そして、自分の隣にかたわれの「不在」という存在を強く意識してしまっている。
「アブセント」(不在、欠けている)は捉えどころのない空虚さをあらわしているようで、いろいろ解釈できそうです。
分かったような分からなかったような(笑)

こちらも、ラストの「エスケイプ」との時を越えた呼応には思わずうなってしまいました。
絲山秋子 | Comments(2) | Trackback(0)
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