★★★☆
何度か読むチャンスがあったのに時間の都合などで返却してしまい、今までずっと読めずにいた本です。 だからちょっと期待値が上がってしまっていたのかな。 それぞれに面白かったのだけど、読み終えて充足感をあまり得られなかったような。 以下12編収録。 永遠に完成しない二通の手紙 …お題「ラブレター」 裏切らないこと …自分お題「禁忌」 私たちがしたこと …自分お題「王道」 夜にあふれるもの …自分お題「信仰」 骨片 …お題「あのころの宝もの」 ペーパークラフト …自分お題「三角関係」 森を歩く …お題「結婚して私は貧乏になった」 優雅な生活 …自分お題「共同作業」 春太の毎日 …お題「最後の恋」 冬の一等星 …自分お題「年齢差」 永遠につづく手紙の最初の一文 …自分お題「初恋」 本書の巻末に、あらかじめ提示されていた「お題」、特に指定がなくしをんさんが設定した「自分お題」が載っていて、それを意識しながら読むのもおもしろかったです。 しをんさんの「王道」と「三角関係」って…やはり一筋縄にはいきませんね(笑) 「冬の一等星」に という文があるのですが、「きみはポラリス」という小説タイトルはここからとられたのでしょうか。 ポラリスというのは、北極星のことなんだそうですね。 動かない、目印となるような星を相手になぞらえるなんて、ロマンチックです(笑) 「裏切らないこと」は、最初から度肝を抜かれました(苦笑) でも、この話を通して語らんとすることは、心にすっと入ってきたかな。 結婚し長年暮らしている相手でさえ、本能的な部分では「他人」である、と感じるいうのが妙に面白くて心に残りました。 「骨片」は、ちょっと気味が悪く、余韻の残る話でした。 「それ」を隠し持ち愛でることで、その時代の女性の立場への思いや、遂げることのなかった行き場のない想いなど、自分の内面を慰めていたのでしょう。 「その世界を狭いと思う人がいるでしょうか。」という先生の言葉が胸にしみました。 「優雅な生活」は一番安心してほっと読めたお話(笑) 二人の意地の張り合いとやりとりが楽しくて、さらりと楽しめました。 「春太の毎日」も、すぐにネタバレしてしまうけど、かわいらしいお話。 小説ならではの面白さです。 |
★★★★
返却してしまったので簡単に覚え書き。 梨木香歩さんの本は、10年ほど前に「からくりからくさ」「エンジェル エンジェル エンジェル」「西の魔女が死んだ」を読んだことがあります。 特に「エンジェル エンジェル エンジェル」は、とても心に響いたお話だった記憶があります。 さて、本作はというと、とても読みにくかったです。 かつて読んだ作品が比較的読みやすいものだったので、正直驚きました。 その書き口は、ついてこれる人だけついて来なさい、といっているかのようにさえ感じたほどでした。 まず主人公の男性の口調が硬い。 今よりも少し時代が遡るのかなという角張った印象。 そしてその語られる、夢と現実が、あるいは過去と現在が入り混じったような世界がとても突飛で不可思議で、内容をなぞるのに精一杯。 でも不思議と読むのをやめようと投げ出す気は起きず、時間はかかったけど最後まで読みました。 結末に辿り着いて本当によかった。 無秩序な世界のようでいて、そこにはちゃんと意味があり、すとんと心に落ち着いたのでした。 じんわりとしみ、優しく切ないお話でした。 本文にちらりと出てくる、芋虫が蛹から蝶へと変化し成長するさまが、主人公自身の心の変容と重なり、混濁した液状化の世界から新たな意味を持った現実へと飛躍する物語と重なって感じました。 この物語にはいくつかの穴が出てきます。 木のうろの穴、虫歯の穴、はたまた記憶の穴だったり。 私は常々、どんな穴にも暗くて中がよく見えず、じっとりと湿って、なんとなく吸い込まれそうな得体の知れない空恐ろしさがあると思っていたので、ここで描かれるその心もとない感覚にどきりとしたのでした。 |
★★★☆
小川洋子さんの描く、独特の空気感が好きです。 おそらくどこか外国の片田舎が舞台となり、その森の近くにある「創作者の家」を管理・世話している「僕」が語る物語。 その村は、しっとりと静かで、寂しく閉ざされ、孤独と死の臭いを感じるような気がします。 碑文彫刻、石棺、埋葬人、ラベンダーの箱、古代墓地。 そんな言葉が印象的な、ひんやりと湿った、静かな村。 創作者の家というのは、芸術家のために無償で提供している作業用ペンションのようなもの。 そこを訪れる芸術家たちは、滞在の長短、常連か一見か、1人であるいは誰かを連れて来るか等、様々。 ただ、碑文彫刻師1人をのぞいて、いずれは去っていく存在です。 「僕」は、彼ら芸術家と一定の距離を保ち、邪魔をしないことを心がけます。
管理人としてずっと居続ける「僕」が、どのような背景を持つ人物なのか、それまでの生い立ちも、本人の家族の話も、何も語られていないので分かりません。 縁もゆかりもない家族写真を骨董市で購入し、部屋に飾る「僕」。 そこに写っている家族の全員が、おそらく死んでいるだろう古い写真です。 直接書かれなくとも、彼が持つ深い孤独と寂しさを感じてしまいます。 ひっそりと続く静かな毎日に、闖入者が突如現れるところから、この物語は始まります。 傷ついているところを保護し、「ブラフマン」と名付けた小動物。 ブラフマンが何の動物かの記載は一切ありません。 私のイメージではアライグマ(ラスカル的な 笑)なのですが、イタチやカワウソの類なのか、そもそも実在する動物なのかも不明。 あれこれ想像するのも楽しいけれど、謎を意味する「ブラフマン」と名付けられたその生き物の正体は、大きな問題ではないのかもしれません。 愛らしく自由奔放に振る舞うこの動物の世話を続けるうち、ブラフマンが「僕」にとってかけがえのない存在になっていきます。 「僕」の生活に色と温度をもたらし、癒し、心にも温もりを与えたのです。 |
★★★☆
森絵都さんの本は久しぶりに読みます。 その辺に転がっているような日常を切り取ったものから、海外を舞台にしたものまで、様々なシチュエーションをリアリティ感じる鋭い視点で描いた短編集。 相変わらず簡潔な文章でとても読みやすく、短編ならではのうまい構成でさらりと楽しめました。 どれも女性の目線で書かれた話と思われ、私にはイメージを掴みやすかったです。 笑ったのが「パパイヤと五家宝」。 ありありと目に浮かびます、こういう光景。 私も月に2、3度はちょっと高級なスーパーに立ち寄る(本書ほど高級ではありませんが)ので、自分を見ているかのようでした。 なにせそのスーパーに行くと、他人の買い物カゴの中が気になるのです(笑) オチも明快で笑ってしまいました。 「夏の森」もよかったです。 自由ホンポウとカブトムシの接点には、なるほどそういうわけが…。 子供時分の捉え方と妻であり母である現在から見た捉え方が、思い出された過去と共に見事に対比されていて、うまいなぁとうなってしまいます。 最後の6行あたりがとても憎い。 「あの角を過ぎたところに」は、ちょっと話が出来すぎかなとも思ったけど、結びがそこに行き着くとは、という驚きがありました。 余韻をもたせる結末に、読後もしばし心がざわめいていました。 そして最終編の「彼らが失ったものと失わなかったもの」。 たった6ページのこの物語の後味がとてもよく、気持ちよく読み終えることができました。 |
★★★☆
移動の道中で慌しく読んだ本。 読み方とタイミングが悪かったのか、好きな江國さんの本なのだけど、この世界観に浸りきることができませんでした。 残念。 あ、でも海辺での風呂敷とのシーンは妙に好きです。 それに、最後に女の子が、「過去の思い出」について語るシーンも。 (なんだかんだ言って、けっこう浸っていますね 笑) 大人のための童話、といった感じで書かれた、やわらかいです・ます調の文章は、読んでいて少し退屈だけど心地いい。 それに、はっとする素敵な言葉にもたくさん出会えました。 そのことだけを取っても、読んでよかったなと思います。 中でも心に響いたのは、お皿のこの言葉。
さらに文庫本を借りたおかげで、好きな歌人の東直子さんの解説を読むことができました。 この解説が本当に素晴らしくて、東さんのことをまた好きになってしまった。 東さんは冒頭でこう述べます。
然り。 そうですね、東さん。 そういうことを、この本はとりわけ感じることのできるお話だと私も思います。 |





