「ブラフマンの埋葬」 小川洋子
ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)
(2007/04/13)
小川 洋子

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★★★☆

ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している“創作者の家”。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた―。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。第32回泉鏡花賞受賞作。
「BOOK」データベースより



小川洋子さんの描く、独特の空気感が好きです。

おそらくどこか外国の片田舎が舞台となり、その森の近くにある「創作者の家」を管理・世話している「僕」が語る物語。
その村は、しっとりと静かで、寂しく閉ざされ、孤独と死の臭いを感じるような気がします。
碑文彫刻、石棺、埋葬人、ラベンダーの箱、古代墓地。
そんな言葉が印象的な、ひんやりと湿った、静かな村。
創作者の家というのは、芸術家のために無償で提供している作業用ペンションのようなもの。
そこを訪れる芸術家たちは、滞在の長短、常連か一見か、1人であるいは誰かを連れて来るか等、様々。
ただ、碑文彫刻師1人をのぞいて、いずれは去っていく存在です。
「僕」は、彼ら芸術家と一定の距離を保ち、邪魔をしないことを心がけます。

芸術家たちの手が苦悩している間、僕はガスレンジを磨いている。車庫のペンキを塗り替えている。落ち葉を集めて燃やしている。僕の手は何も創り出さない。


管理人としてずっと居続ける「僕」が、どのような背景を持つ人物なのか、それまでの生い立ちも、本人の家族の話も、何も語られていないので分かりません。
縁もゆかりもない家族写真を骨董市で購入し、部屋に飾る「僕」。
そこに写っている家族の全員が、おそらく死んでいるだろう古い写真です。
直接書かれなくとも、彼が持つ深い孤独と寂しさを感じてしまいます。

ひっそりと続く静かな毎日に、闖入者が突如現れるところから、この物語は始まります。
傷ついているところを保護し、「ブラフマン」と名付けた小動物。
ブラフマンが何の動物かの記載は一切ありません。
私のイメージではアライグマ(ラスカル的な 笑)なのですが、イタチやカワウソの類なのか、そもそも実在する動物なのかも不明。
あれこれ想像するのも楽しいけれど、謎を意味する「ブラフマン」と名付けられたその生き物の正体は、大きな問題ではないのかもしれません。

愛らしく自由奔放に振る舞うこの動物の世話を続けるうち、ブラフマンが「僕」にとってかけがえのない存在になっていきます。
「僕」の生活に色と温度をもたらし、癒し、心にも温もりを与えたのです。
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【2009/11/05 18:38】 | あ行その他 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
「架空の球を追う」 森絵都
架空の球を追う架空の球を追う
(2009/01)
森 絵都

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★★★☆

やっぱり罠にはまった。そんな気がする。ふとした光景から人生の可笑しさを巧妙にとらえる森絵都マジック。たとえばドバイのホテルで、たとえばスーパーマーケットで、たとえば草野球のグラウンドで、たとえばある街角で…人生の機微をユーモラスに描きだすとっておきの11篇。
「BOOK」データベースより


森絵都さんの本は久しぶりに読みます。

その辺に転がっているような日常を切り取ったものから、海外を舞台にしたものまで、様々なシチュエーションをリアリティ感じる鋭い視点で描いた短編集。
相変わらず簡潔な文章でとても読みやすく、短編ならではのうまい構成でさらりと楽しめました。
どれも女性の目線で書かれた話と思われ、私にはイメージを掴みやすかったです。

笑ったのが「パパイヤと五家宝」。
ありありと目に浮かびます、こういう光景。
私も月に2、3度はちょっと高級なスーパーに立ち寄る(本書ほど高級ではありませんが)ので、自分を見ているかのようでした。
なにせそのスーパーに行くと、他人の買い物カゴの中が気になるのです(笑)
オチも明快で笑ってしまいました。

「夏の森」もよかったです。
自由ホンポウとカブトムシの接点には、なるほどそういうわけが…。
子供時分の捉え方と妻であり母である現在から見た捉え方が、思い出された過去と共に見事に対比されていて、うまいなぁとうなってしまいます。
最後の6行あたりがとても憎い。

「あの角を過ぎたところに」は、ちょっと話が出来すぎかなとも思ったけど、結びがそこに行き着くとは、という驚きがありました。
余韻をもたせる結末に、読後もしばし心がざわめいていました。

そして最終編の「彼らが失ったものと失わなかったもの」。
たった6ページのこの物語の後味がとてもよく、気持ちよく読み終えることができました。
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【2009/10/25 18:22】 | ま行その他 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
「すきまのおともだちたち」 江國香織
すきまのおともだちたち (集英社文庫)すきまのおともだちたち (集英社文庫)
(2008/05/20)
江國 香織

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★★★☆

庭で育てたレモンの木からレモネードを作り、針仕事で暮らしている「おんなのこ」。両親は最初からなく、車も運転できる古びた「お皿」と住んでいる―。仕事で訪れた街で道に迷い、帰れなくなった新聞記者の「私」は、客として彼女たちにもてなされることになるのだが…。けっして変わらないものが存在し続ける、そんな場所で出会った、小さな女の子との、いっぷう変わった長い長い友情の物語。
「BOOK」データベースより


移動の道中で慌しく読んだ本。
読み方とタイミングが悪かったのか、好きな江國さんの本なのだけど、この世界観に浸りきることができませんでした。
残念。
あ、でも海辺での風呂敷とのシーンは妙に好きです。
それに、最後に女の子が、「過去の思い出」について語るシーンも。
(なんだかんだ言って、けっこう浸っていますね 笑)

大人のための童話、といった感じで書かれた、やわらかいです・ます調の文章は、読んでいて少し退屈だけど心地いい。
それに、はっとする素敵な言葉にもたくさん出会えました。
そのことだけを取っても、読んでよかったなと思います。

中でも心に響いたのは、お皿のこの言葉。

「私たちをほんとうにしばるのは、苦痛や災難や戸棚ではないのよ。幸福な思い出なの。それに気づいたとき、私はとびだす決心をした。
やってみれば簡単なことだった」



さらに文庫本を借りたおかげで、好きな歌人の東直子さんの解説を読むことができました。
この解説が本当に素晴らしくて、東さんのことをまた好きになってしまった。
東さんは冒頭でこう述べます。

「読み返すたびに、心に響く部分がまるで違うことがあり、驚いてしまう。すっかり忘れていた場面に、妙に反応してしまったり。なぜそんなふうに、読むたびに感じ方が変わるのか。答は簡単。自分が変わったからである。本の中身は変わらないのだから。(中略)書いた人が、読んだ人が、どんなに変わっても、たとえこの世にいなくなったとしても、どんなに時代が移り変わっても、本の中の世界は、永遠だ。」


然り。
そうですね、東さん。
そういうことを、この本はとりわけ感じることのできるお話だと私も思います。

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【2009/10/22 12:14】 | 江國香織 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
「こいしり」 畠中恵
こいしりこいしり
(2009/03/27)
畠中 恵

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★★★☆

「あのね、この子猫達、化けるんですって」お気楽跡取り息子・麻之助に託された三匹の子猫。巷に流れる化け猫の噂は、じつは怪しい江戸の錬金術へとつながっていた!?町名主名代ぶりも板につき、絶妙の玄関捌きがいっそう冴えながらも、淡い想いの行方は皆目見当つきかねる麻之助。両国の危ないおニイさんたちも活躍するまんまことワールド第二弾。
「BOOK」データベースより


図書の返却期限が近づき、返してしまっため、簡単な覚え書きと感想のみ。

この間、畠中恵さんの本を読んだばかりで、それがいまいちだったものだから少し冷却期間を置きたかったのだけど、図書館の予約の順番というのは自分の意とは関係なく、おかまいなしに周ってくるものでして。

でもこちらはやはり好きなシリーズということもあって、面白かったです。
麻之助とお由有、お寿ずの関係は、今後円満にいくのか、続編が待ち遠しいです。

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【2009/10/16 17:33】 | は行その他 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
「論理と感性は相反しない」 山崎ナオコーラ
論理と感性は相反しない論理と感性は相反しない
(2008/03)
山崎 ナオコーラ

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★★★☆

神田川歩美、矢野マユミズ、真野秀雄、アンモナイト、宇宙、埼玉、ボルヘス、武藤くん。神田川(24歳、会社員)と矢野(28歳、小説家)の2人を中心に、登場人物がオーバーラップする小説集。「小説」の可能性を無限に拡げる全15編。
「BOOK」データベースより


図書の返却期限が近づき、返してしまっため、簡単な覚え書きと感想のみ。

度肝を抜かれるような名前とデビュー作から、なんとなく近寄りがたかった山崎ナオコーラさん。
初めて読んでみました。

短編なのですが、話にところどころつながりがあり、面白い構成となっています。
いたって真面目に、ふざけたことを書いてます(笑)
レビューなど見ていると、賛否両論のようなのですが、私は1話目の表題作「論理と感性は相反しない」から、好きだなぁと思いました。
さらりと読みやすいし、共感できる感覚がわりとあります。
(と同時に、訳の分からないものもあり 笑)
遊び心満載で、後半にいくにつれ、え?と思うところもありましたが、このはちゃめちゃ感は癖になりそう。

表題作の他、印象に残ったのは「恐怖の脅迫状」「まったく新しい傘」。
他の作品も読んでみようかな。

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【2009/10/16 17:26】 | や行その他 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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